2014年02月13日 17:20 弁護士ドットコム
ハローワークで職探しをするとき、給与など労働条件を記した「求人票」は、仕事を選ぶ手がかりとなる重要なものだ。この求人票の内容について、「実際と違う」という苦情や相談が、全国各地の労働局などに年間7000件以上も寄せられているのだという。
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「月18万円のはずが17万で、通勤手当も『ある』はずが全く支払われない」「週休2日のはずが1日だった」「あるはずの雇用保険、社会保険も実際には未加入」……。連合が昨年実施した電話相談には、こんな訴えが寄せられていたという。
このような実際と異なる「魅力的な条件」で人を集める手法は、「おとり求人」と呼ばれている。おとり求人にひっかからないために、あやしい求人票をどう見抜き、どのように対処すればいいのだろうか? 労働問題にくわしい竹之内洋人弁護士に聞いた。
「求人票や求人広告だけから『おとり求人』を見抜くのはなかなか難しいと思います。あまりにも好条件なのは裏があるかも、というくらいでしょうか」
竹之内弁護士はこのように話す。何か対処法はないのだろうか?
「大事なのは、まず、採用が決まったとき、きちんと会社に労働条件を確認することです。これは当然の権利です。
それで就職がダメになるような会社なら、入社したとしても、理不尽な目に遭うことが多いと思います」
まずは確認が重要なわけだ。そこでおかしいと気づいたら?
「もし実際に会社から示された条件が求人票と違っていたときは、臆せずに問いただしましょう。
求人票と異なる内容の労働契約書にサインしたり、労働条件通知書に異議を述べないと、それらの内容が優先することになります。求人票は契約書ではないからです」
竹之内弁護士が指摘するように、雰囲気に流されてサインしてしまえば、後からそれをひっくり返すのは難しそうだ。
しかし、契約時にくわしい説明がなく、働いてみてはじめて、「話が違う」と気づく場合もあるのではないだろうか?
「働き始めてから求人票と条件が違うと気が付いた場合ですが、求人票と異なる内容の『労働契約書』を作成する前であれば、『求人票どおりの条件で労働契約が成立している』と解釈することも可能です。
しかし、条件が違うと気づいても黙ったままだと、時間の経過とともにどんどんと不利な状況になっていきます。たとえば裁判で会社が「口頭で了解を得ていた。だから異議もなかった」と主張したとき、会社側の言い分が通る可能性が、より高くなってしまうでしょう。
つまり、条件が違っていたことに気が付いたときは、すぐに会社に申し出ましょう。会社に物申すのはなかなか難しい、という方も多いでしょうが、言うべきことは言っておかないと、自分が不利になります」
やはりこの手の話は、「気づいたら即対応」が重要となってくるようだ。竹之内弁護士は「もし、『おとり求人』に遭遇したときは、他の方が同じ目にあわないようにするためにも、そのことをハローワークや広告媒体に通報しましょう」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/