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「子どもの喫煙」を黙認したら書類送検 「保護者の義務」はどこまであるの?

2014年02月13日 15:30  弁護士ドットコム

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「子どもの喫煙を止めなかった」として、保護者が書類送検されるケースが増加しているようだ。


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神奈川県では1月、高校1~2年生の子どもの喫煙を黙認していたとして、6人の保護者が未成年者喫煙禁止法違反で書類送検された。報道によると、保護者たちは「(世間体が悪いから)家の中で吸えと言った」「どうせ言うことを聞かないと思い、仕方なく渡してしまった」などと話しているそうだ。



未成年者の喫煙をめぐっては、タスポカードの導入や購入時の年齢確認強化など、社会的な対策は進んでいる。その一方で、保護者が子どもの喫煙を止めなかったとして書類送検される事例は、神奈川県の場合、2013年に112件を数えた。これは08年の14件と比べ、大幅に多い数字なのだ。



そうなると気になるのが、いったい保護者は、何をどこまでやらなければならないのか、という点だ。未成年者喫煙禁止法は、保護者の義務についてどのように定めているのだろうか。宮島繁成弁護士に聞いた。



●全国的にも「保護者」の摘発が増えている


「未成年者喫煙禁止法は明治33年(1900年)、つまり今から114年前にできた法律です」



このように宮島弁護士は語る。ずいぶん昔に作られた法律なのだ。



「この未成年者喫煙禁止法の第3条では、『親権ヲ行フ者情ヲ知リテ其ノ喫煙ヲ制止セサルトキ』は、『科料』にすると定めています。



この法律で定められている保護者の義務は、この部分だけです。神奈川県の事件で親たちが書類送検されたのも、この条文が根拠となっています」



ここでいう「科料」とは何だろうか。



「科料は1万円未満の財産刑のことです。刑罰としては一番軽い内容で、科料が実際に適用されることは多くありません。



しかし、こうしたケースでは、社会や親に対する警告の意味を込めて、神奈川県だけではなく、全国的にも摘発が増えています」



宮島弁護士はこう指摘する。保護者の摘発が増えているとしたら、実際にタバコを吸った未成年はどんな犯罪になるのか。その点については、「シンナーや麻薬などと違い、未成年者喫煙防止法では、吸っている本人(未成年者)は処罰されません」ということだ。



●問題の根っこに「親子関係のゆがみ」がある


では、こうして法律でも禁じられているにもかかわらず、親はなぜ、子どもの喫煙を許してしまうのだろうか?



「なかには、『自分も吸ってるから、おまえも吸え』と積極的に勧めるケースもあるかもしれません。しかし、実際には『外で吸われるよりまし』『万引きするよりまし』『注意しても聞かない』『怖くて注意できなかった』など、放置や消極的容認が多いようです」


宮島弁護士はこのように述べたうえで、「子どもの喫煙問題は、親の監護のあり方が真正面から問われる場面にほかならず、親が責任をもって養育し子どもが親の監護の中で生活するという関係が、正常に機能していない状態です。その根っこにあるのは、親子の関係性のゆがみであるといえます」と指摘していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
宮島 繁成(みやじま・しげなり)弁護士
日弁連子どもの権利委員会、同いじめ問題対策プロジェクトチーム。その他、スポーツ問題や法教育にも取り組んでいる。
事務所名:ひまわり総合法律事務所
事務所URL:http://www.himawarilaw.com