2014年02月08日 16:10 弁護士ドットコム
中国が月面に送り込んだ探査車「玉兎(ぎょくと)号」が、トラブルに見舞われている。
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CNNなどによると、玉兎号は昨年12月、月面探査機「嫦娥(じょうが)3号」に乗せられて月面に着陸した。3カ月にわたって、月面を探査をする予定だったが、機械制御システムに異常が見つかった。このまま故障して、永久に復旧できない恐れもあるという。
今回、中国が月面を探査しようとした真意は不明だが、一説によると、レアメタルやレアアースなど天然資源の獲得を目指した調査ではないか、という話もある。では、そもそも月の資源は誰のものなのだろうか。月の資源をめぐる法的な課題について、作花知志弁護士に聞いた。
「まず、月に関する宇宙法である『月協定』は、その11条で、月の取得・所有の禁止を規定しています。
また、宇宙法の基本法である『宇宙条約』の2条にも、天体・宇宙空間は、国家による取得の対象とならない、という同じ趣旨の規定が設けられています」
つまり、現在の枠組みにおいては、天体や宇宙空間については、「国家が所有する対象」とはみなされていないようだ。国際法上、それらはどんな扱いを受けているのだろうか?
「この規定は、天体・宇宙空間を、海の深海底や南極と同様の『人類の共同財産』として位置づけるものです。
中国は、『月協定』については批准していませんが、『宇宙条約』は批准していますので、当然月についても、取得を行ってはならない義務を負っています」
そうなると、中国の思惑はどうあれ、誰かが勝手に宇宙資源を独占することは国際法上むずかしいと言えそうだ。
「問題は、ある特定の国が宇宙法上の義務に違反して、月の資源の取得を行った場合、国際社会として、いかなる手段でそれを防御できるのか、ということです。
科学技術の発達により、宇宙開発が比較的容易になった現在において、しだいにシリアスな問題となってきています」
国際法違反で処罰、とはいかないのだろうか? 作花弁護士は次のように指摘し、課題を述べていた。
「確かに、さきほどの規定は現在、国際慣習法と見なされ、条約を結んでいない国をも拘束する、とも言われています。
しかしながら、国際法は国内法とは異なり、違反者に対する『強制力が不十分』だと評価される場合もままあります。
平和な宇宙開発を実現するためには、違反国に対して、国際社会が実効的な措置を採れるよう、さらなる条約上の制度作りが求められていると思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連裁判員本部、日弁連国際人権問題委員会、日本航空宇宙学会、国際人権法学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/