2014年02月08日 15:10 弁護士ドットコム
女性お笑いトリオ「森三中」の大島美幸さん(34)が、5月から芸能活動をしばらく休業する、と報じられた。子どもを授かるために体と心を整え、「妊活」に専念するのだという。
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大島さんは2002年に放送作家の鈴木おさむさん(41)と結婚。2008年には流産を経験していた。そんな彼女に対して、所属する芸能事務所も、「妊活のための休業」を了承しているという。報道によると、大島さんは「体を張る仕事も多く、年齢的にも限りがあるので、妊活のために休業をするという決断は早めのほうがいいと思いました」とコメントしている。
大島さんの場合は、周りの理解があったからこそ、「妊活」のための休業に踏み切れたようだ。もちろん、芸能人という特殊な職業という理由もあるかもしれない。では、一般的な会社に勤める女性が「子供がほしいので、妊娠するために一定期間休ませてほしい」と申し出たら、認められるのだろうか。高木由美子弁護士に聞いた。
「大島さんの今回の決断は、『妊活目的の休暇』が将来、企業に広く受け入れられるようになるための良いきっかけになると思います。
ただし、妊活を公言することが一般的とはいえない今の社会で、多くの企業が妊活休暇制度を取り入れるには、まだ時間がかかると思います」
高木弁護士は大島さんへの敬意をこめて、こう話す。働く人の権利として認められている産休や育休と違い、「妊活休暇」はまだ認められてはいないのだろうか?
「従業員の『妊活休暇』を定めた法律は、いまのところありません。
また、仮にそうした法律があったとしても、実際に取得できるかどうかは、企業や経営者の考え方に左右されることになりそうです
すでに法律で規定されている育児休暇ですら、取得率は企業ごとに大きく異なっていますからね」
高木弁護士はこのように指摘する。これから国として妊活休暇制度の実現を目指すとすれば、法律の整備だけでなく、社会の理解を深める方法も、同時に考える必要がありそうだ。
もし企業が独自に「妊活休暇制度」を導入するとしたら、どんな課題があるだろうか?
「一部の大手企業等ではすでに、不妊治療目的での休暇を認めている企業があるようですが、まだ、一般的ではありません。
企業の立場で考えた場合、(1)産休や育休と比べてゴール時期の見通しが立ちにくいことや、(2)妊娠後に退職してしまうケースなどが、懸念点に思えるかもしれません」
企業の側からすれば、デメリットが目立ってしまうのだろうか?
「いいえ、そうとも限りません。逆に妊活休暇制度のおかげで、『退職しなくて済む』という場合もあるでしょう。
せっかくキャリアを積み、企業の中心的存在となった従業員が、『妊活』のために退職を余儀なくされてしまうとすれば、本人にとってだけではなく、企業にとっても大きな損失です。
妊活を含めた仕事と生活のバランスをとるための制度を作り、実施することは、企業にとっても大きなメリットがあると言えるのではないでしょうか」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属弁護士。カリフォルニア州弁護士。離婚事件、労働事件、遺産相続事件、国際・外国人事件を中心に扱っている。
事務所名:さつき法律事務所
事務所URL:http://www.satsukilaw.com/