2014年02月07日 15:10 弁護士ドットコム
「こちらは交通事故の被害者なのに……まさに二次被害ですよ」。岡山県在住のMさんはこう、ため息をついた。Mさんはこのほど、信号待ちで停車しているとき、後ろの車に追突される事故に遭った。過失割合は10対0でMさんは完全な被害者だ。それにもかかわらず、加害者側の損害保険会社がよこした担当者の態度が、あまりにもひどいのだという。
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「たとえば、通院のためのタクシー代を支払ってくれることになっていたはずが、後から『そんな話はしていない』とひっくり返すんです。こちらが反論したら『検討する』などと散々引き延ばしてから、恩を着せるように『仕方ないので認める』とか……。こんなやり取りの繰り返しで疲れました」
その担当者はときどき声を荒げて「あんたねぇ」とつっかかってくることもあるそうで、Mさんは相当なストレスを感じているそうだ。こうした精神的苦痛を理由に、慰謝料の増額を求めることはできるのだろうか。また、このように保険会社の対応に不満がある場合、どのような対処がありうるだろうか。交通事故の問題にくわしい重長孝志弁護士に聞いた。
「裁判例の中には、『加害者本人』があまりにも不誠実な対応をとったことを、慰謝料の増額事由として考慮した例があります。
しかしながら、交通事故の損害賠償として認められる慰謝料は、基本的には、交通事故で負ったけがや後遺障害による精神的苦痛に対して、『加害者自身の責任』として認められるものです。
したがって、『加害者が入っていた保険会社の担当者の対応』が、慰謝料の増額事由として考慮されることは考えにくいと思います」
保険会社の対応の悪さについては、交通事故そのものの損害賠償とは、別に考えるべき問題のようだ。
それでは、保険会社の担当者の態度があまりに悪かったら、どうすればいいのだろうか?
「保険会社の担当者の対応について不満を持たれた場合、まずは各保険会社の苦情相談窓口に相談することが考えられます。
その結果、保険会社内で問題の担当者に対し指導がなされ、担当者の対応が改善することも、期待できるかも知れません。
また、一般社団法人日本損害保険協会の『そんぽADRセンター』を利用することも考えられます。こちらは、苦情解決手続といって、『そんぽADRセンター』に苦情の申出をすることで、保険会社に苦情の内容が通知されるようになっています」
重長弁護士はそのうえで、「もし示談交渉での補償範囲について、保険会社の対応に疑問を持たれたときは、ぜひ弁護士に相談して下さい。
妥当な補償範囲について理解することで、自信をもって交渉ができ、ストレスも多少は軽減されるのではないでしょうか」とつけ加えていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
重長 孝志(しげなが・たかし)弁護士
隼綜合法律事務所 所長弁護士
事務所名:隼綜合法律事務所
事務所URL:http://hayabusa-legal.com/