2014年02月06日 17:40 弁護士ドットコム
テレビ放映中のアニメ「最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。」。この番組が、BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会によって「審議」されることになった。親の再婚で義理の兄妹となった高校生らが繰り広げるラブコメディだが、エロティックな演出が行き過ぎと考える人もいたようだ。
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BPOによると、視聴者から、「女子高生が自慰行為をするなど、性的な表現があるアニメが、中高生が視聴できる時間帯(22時台)で放送されている」といった意見が多数寄せられたのだという。審議入りを受けて、地上波で放送していた東京MXテレビとサンテレビは、放送時間を深夜25時以降に変更している。
ところで、近ごろやけに目にする機会が多いこの「BPO」。いったいどんな組織で、何を審議しているのだろうか。BPOで放送人権委員会委員を務める、京都大学の曽我部真裕教授(憲法)に聞いた。
「BPOは、NHKと民放連(民間放送連盟)によって設置された、自主的な第三者機関です。
その使命は、放送の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理の問題に対応することです。
BPOは国から完全に独立した機関で、運営資金も放送局の拠出でまかなわれています。また、実際に番組の審査にあたる委員会や、その委員を選ぶ評議員会のメンバーは、放送局の役職員ではない有識者から選任され、放送局からも完全に独立しています」
つまり、国や放送局の思惑から離れた「中立的」な立場から、放送内容を考える機関ということだ。内部では、どんな議論が行われているのだろうか?
「BPOには3つの委員会が設置され、役割分担しています。青少年委員会と放送倫理検証委員会、放送人権委員会です。
今回のアニメ番組を『審議』する青少年委員会は、主に青少年の健全育成という観点から個別の番組について意見を述べたり、一般的な提言をするなどの活動をしているところです。
今回のように、個別の番組について『審議入り』すると、その後は番組制作者や放送局の担当者との意見交換などを経て、『委員会の考え』を公表することになります。
なお、委員の3分の2以上の賛成で、『考え』より程度の重い『見解』を出すこともあります。『見解』を出す場合には、放送事業者に対して《自主的検討を行って、その結果をBPOに報告するよう》に、併せて要求も行います」
他の委員会はどんな内容を話し合うところなのだろうか?
「残りの2つのうち、放送倫理検証委員会は、個別の番組の個人の権利侵害以外の放送倫理違反について審理するところで、バラエティやニュース番組のやらせ問題などで話題になることも多いです。
最後の1つが、私の所属する放送人権委員会です。個別の番組によって名誉やプライバシー等の権利を侵害された個人からの申立てを受けて、権利侵害や放送倫理違反がなかったかどうかを判断する委員会です。直近では、ドラマ『明日、ママがいない』に関して審議を求める申立てがあったことで、ニュースとなりました」
曽我部教授はBPOについて、このように説明したうえで、「BPOのホームページ(http://www.bpo.gr.jp/ )では、決定内容だけでなく、審議の模様など詳しい情報を公開していますので、ぜひご覧ください」と話していた。
いまなお世の中に多大な影響を持つテレビ番組だが、BPOへの申立てが相次いでニュースになるのは、視聴者が「最近、テレビのようすがちょっとおかしいんだが。」と考えはじめた証拠、と言えるのかもしれない。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力】
曽我部真裕(そがべ・まさひろ)京都大学大学院法学研究科教授(憲法学)。現在の研究テーマはメディア・情報法制の国際比較。著書に『反論権と表現の自由』(有斐閣、2013年)など。