2014年02月03日 19:50 弁護士ドットコム
「かかりつけ弁護士」で、弁護士をより身近な存在に――。静岡県弁護士会(中村光央会長)は3月から、静岡市内の自治会に担当弁護士を割り当てる「自治会ホームロイヤー制度」を試験導入する。
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自治会から顧問料はとらない。しかも、自治会員1人につき3回まで、無料で法律相談を受け付ける仕組みだという。なんとも「太っ腹」な試みに思えるが、いま、なぜこうした制度を始めようとしているのだろうか。発案者の中村会長に聞いた。
「オレオレ詐欺や押し売り被害などに遭いかけた市民が、その場ですぐ弁護士に電話できる。そんな、セーフティネットを作りたかったんです」
中村会長は制度について、このように話す。自治会ホームロイヤーの具体的な仕組みは、次のようなものだ。
静岡市内にある960の自治会を42のグループに分け、それぞれのグループごとに2~3人の弁護士が担当として配置される。自治会員は困ったとき、自分たちのグループを担当する弁護士に直接連絡を取ることができるのだ。相談だけなら、電話や面接を合わせて3回まで「無料」だ。
試験導入に向け、まずは、担当弁護士の顔写真と電話番号などを書いた紙を、自治会の回覧板にのせて、各世帯1枚ずつ配布する計画だという。回覧板とはアナログだが、地域に入り込むには有効な手段なのだろう。
「ほら、水のトラブル…というシールやマグネットの小さな広告がよくあるでしょう?あんな風に、電話の横に貼っておいて、困ったらすぐに電話をかけてもらえるように考えました」
軽やかに語る中村会長だが、導入には反対もあったようだ。自治会からの顧問料ももらわない上に相談料は無料となると、「そこまでする必要はない」「弁護士の業務をタダで切り売りするなんて…」と、一部のベテラン弁護士は苦言を呈したという。
なぜ、それでも実現したのか。
その理由は、若手・中堅を中心に「市民への司法サービスを実現できる」と圧倒的な支持を受けたからだという。加えて、若手にとっては、担当する2000~3000世帯の各家庭に直接、自分の名前を売り込めるメリットもある。また、年に2回は担当自治会の役員との協議もあり、地元のニーズをつかむこともできる。
「若手には地域の中に入りこんで、地域の顔役や商店街の事業主さんたちなどに人間関係を広げていってもらいたい。担当地域の公民館を借りて独自の法律相談会を開くなど、本人たちの裁量しだいでいろいろできるでしょう」
いまは、静岡市と協定を結ぶことも協議中といい、静岡市でうまくいけば、その次は浜松市……といったように、県内全域に広げていきたいという。
ひょっとするとこの制度、全国のモデルケースになるのでは……?
記者がこう問いかけると、中村会長は茶目っ気たっぷりに「いやいや、静岡だけの専売特許にしたいんですが……」と話していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力】
静岡県弁護士会
弁護士426人が登録している。弁護士会館は静岡市にあるが、静岡、浜松、沼津の3支部に分かれる。このうち静岡市を担当に含む静岡支部の会員は、168人。中村会長は2013年に選任された。