2014年02月02日 13:20 弁護士ドットコム
3月の引越しシーズンに向け、そろそろ準備を始めている人もいるだろうか。引越しの準備は意外に時間がかかる。春からの新生活をスムーズに迎えるためにも、新居に持っていく品、捨てる品など、いまから計画的にリストアップをしておいたほうが良いかもしれない。
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ところで、転居の際、持って行きにくいもののひとつが「エアコン」だろう。特に賃貸の部屋に自費購入したエアコンを取り付けた、というケースは悩ましい。自分で取り外すのは大変だし、業者に移設を頼むとなんだかんだと高くつく。やむなく部屋に置いていく……という人も多そうだ。
こうした場合、部屋の借り主は、自分で購入したエアコンを大家に「プレゼント」しなければならないのだろうか。それとも部屋を退去する際、エアコンを大家に買い取ってもらうことも可能なのだろうか。不動産問題にくわしい高島秀行弁護士に聞いた。
「借地借家法は、借り主に『造作買取請求権』を認めています。
これは、賃貸中に貸主の承諾を得て取り付けたモノを、退去時に買い取ってもらえるという権利です。
建物の価値を高めているモノを取り外すことで建物を傷つけたり、取り付けたモノ自体の価値を下げたり、といった損失が生じるのを防ぐためのルールです」
造作買取請求権は、賃貸契約で排除されている場合もあるということだが、そうでない限り、この権利を使えば、エアコンを買い取ってもらえそうだが……。
「しかしながら、この買取請求の対象となるのは『造作』だけ、という大きな問題があります。
さきほど説明したように、造作買取請求権の主眼は『建物と取り付けたモノの保護』にありますので、独立性が高く、取り外しが容易で、取り外しても価値が減少しない物は『造作』に当たらないとされています。
この点、家庭用エアコンは、建物もエアコン本体も傷つけずに取り外すことが可能です。エアコンが『造作』と言えるかどうかは、判断が難しいところです」
結局、買い取ってもらうのは難しいのだろうか? 高島弁護士は次のように話していた。
「たとえば、家庭用エアコンの取り外し費用に着目して、《取り外しで価値が減少するから『造作』に当たる》と主張することも考えられるかもしれませんが……ちょっと厳しいかもしれません。
また、簡易裁判所の判例ですが、家庭用エアコンは『造作に当たらない』と判断したものもありますので、この権利によって買い取ってもらえるとは言い切れません。
ただ、大家さんにとっても、部屋にエアコンが付いているほうがメリットがあるのは事実です。もし面倒でなければ、買い取ってもらえないか交渉してみるのも一つの方法かと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高島 秀行(たかしま・ひでゆき)弁護士
「ビジネス弁護士2011」(日経BP社)にも掲載され、「訴えられたらどうする」「相続遺産分割する前に読む本」「企業のための民暴撃退マニュアル」(以上、税務経理協会)等の著作がある。ブログ「資産を守り残す法律」を連載中。http://takashimalawoffice.blog.fc2.com/
事務所名:高島総合法律事務所
事務所URL:http://www.takashimalaw.com