2014年01月31日 18:00 弁護士ドットコム
有料購読しているメールマガジンを読んでいたら、仕事に役立つ情報が書いてあったので、会社の同僚にそのメールを転送して、情報を共有した――そんな経験をもつ人は少なくないだろう。
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もしメールマガジンの内容をそのまま全部、自分のブログで勝手に公開したら、著作権侵害になってしまうだろう。では、同じ会社の人間だけが見るメーリングリストに、メルマガを転送した場合はどうなのだろうか。
自分で買った新聞や雑誌を仲間内で回覧することと、やっていることは変わりないようにも思えるのだが……。著作権問題に詳しく、著作権をテーマにしたブログを運営している柿沼太一弁護士に聞いた。
「ひとくちに『情報の共有』といっても、『自分で買った新聞や雑誌を仲間内で回覧すること』のほかに、今回のように『メルマガの内容を友人に転送すること』や『メルマガを会社内のメーリングリストに流すこと』など、いろいろなパターンがあります。
このうち、『複製行為』を行っている場合には、残念ながら、原則として著作権侵害ということになります」
どれが複製行為にあたるのだろうか?
「まず、『自分で買った新聞や雑誌を仲間内で回覧すること』は、全く『複製』を行っていません。したがって、著作権侵害とは言えません。
しかし、『メルマガ内容を友人に転送すること』や『メルマガを会社内のメーリングリストに流すこと』の場合は、メールサーバー内でメルマガの内容の複製行為を行っていることになりますので、原則として著作権侵害です。
これは、メルマガが有料であろうと無料であろうと、同じです」
しかし、例外的に複製をしても、侵害とならないケースもあるようだ。それはどんな場合だろうか?
「たとえば、複製が私的利用目的(著作権法30条1項)の場合には、著作物を自由に利用できます。
しかし、ここでいう私的利用の範囲は、『個人的に』『家庭内』『その他これに準ずる限られた範囲内』に限定されています。
本件のように、企業等の内部で使用する目的の場合は、この例外に含まれません」
では、企業内では、著作物の無断複製は、どのような場合でも許されないのだろうか?柿沼弁護士は次のように話していた。
「企業内でも、2012年の著作権法改正で新設された、『検討の過程における利用』(同30条の3)という例外に当てはまる場合があります。
これは、大まかに説明すると、最終的に著作権者から許諾等を得ることが前提の企画を検討している際に、企画書等に著作物を複製する場合は、著作権侵害にはならない、というルールです。
たとえば、メルマガを書籍化しようとした出版社が、社内での検討資料としてメルマガを複製したようなケースなら、侵害とはされないでしょう」
しかし、これはあくまで「例外的」なケースと言えるだろう。簡単な操作で「複製(転送)」できてしまうメルマガだが、それだけに取扱いにもしっかりと気を配ったほうがよさそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
柿沼 太一(かきぬま・たいち)弁護士
兵庫県弁護士会所属、映像制作会社やアーティストからの著作権に関する依頼案件が多い。著作権に関するブログ「プロのための著作権研究所」(http://copyrights-lab.com/)を執筆中。
事務所名:かけはし法律事務所
事務所URL:http://www.kakehashilaw.jp/