トップへ

無断駐車している車に「次ここに止めたら殺す」と張り紙・・・「脅迫罪」になるか?

2014年01月30日 20:20  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「違法駐車禁止 次ここに止めたら お前とお前の家族を殺す 必ず殺す」。マンションの敷地内に無断で駐車していた車に、このような張り紙をしたという書き込みが、ネット掲示板に投稿されて、話題になっている。


【関連記事:デヴィ夫人が出演者に平手打ち? 「暴行罪」が成立するのはどんなときか】



一連の書き込みによると、この人物のマンションの敷地内に3日間にわたり無断駐車がされていたのだという。自分自身はお金を払って駐車場を利用していることから、腹を立て、その車のフロントガラスに、目立つように大きな字で張り紙を貼ったというのだ。



ことの真偽は不明だが、もし本当にそういった内容の張り紙をしていたのだとしたら、脅迫罪などになってしまうのだろうか。一方で、マンションや店舗の敷地内などの私有地への無断駐車を発見した場合、どのように対処するのがよいのだろうか。東山俊弁護士に聞いた。



●「脅迫罪」が成立する可能性がある


違法駐車された自動車に「殺す」という張り紙をした場合、脅迫罪に問われるのだろうか?



「こうした張り紙は一種の警告ですが、危害を加えるおそれを感じさせるものですので、脅迫罪が成立する可能性があります。



もっとも、それだけで起訴されたり実刑になったりするほど重大な罪ではないと思われます」



東山弁護士はこのように指摘する。では、逆に、とても迷惑な「無断駐車」は、犯罪とはならないのだろうか?



「道路交通法が禁止しているのは、『駐車禁止の場所』への駐車ですので、私有地に駐車しても道交法違反にはなりません。



警察に通報しても、警告くらいはしてくれるかもしれませんが、一般的にはそれ以上のことはしてくれないでしょう。



無断駐車を予防する方法としては、無断駐車禁止の張り紙をすることが考えられます。また、プランターや工事現場に置いてあるようなカラーコーンを設置することも有効でしょう」



●個人で対処するのは難しい側面がある


もし、そういう対策をとっているのに無断駐車をされてしまったら?



「自分で動かしたい、と思われるかもしれませんが、勝手に自動車を撤去することは、『自力救済の禁止』といって認められていません。



また、駐車している自動車に、直接何らかの手を加えると、自分が器物損壊などの罪に問われる可能性があります。



他人の自動車を強制的に撤去するためには、撤去や駐車差し止めなどを求める裁判を起こし、勝訴判決を得たうえで強制執行、というように段階を踏む必要があります」



たとえば相手を訴えて、損害を賠償してもらうことはできるのだろうか?



「可能です。ただし、通常の駐車料金程度のごく少額しか認められないと思われます」



そうなると個人がすぐに打てる手は……?



「さきほども述べたとおり、無断駐車に対して、あまり強硬な手段を取ると、逆にこちらが罪に問われることになりかねません。勝手に自動車を撤去することもできません。損害賠償が認められてもごくわずかな金額です。



個人でできる対処は、張り紙などで予防するくらいしか方法がないのが現実です」



東山弁護士はこのように述べていた。



ただ、この張り紙に書く内容についても、慎重に考えたうえで、「脅迫」に該当しないような表現にしておいたほうが良さそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/