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電車で悪ふざけ「全裸」に・・・車内に仲間しかいなくても「公然わいせつ」になる?

2014年01月30日 15:40  弁護士ドットコム

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昨秋、ツイッターで広まった「裸の男性が電車内に佇む写真」を覚えている方はいるだろうか。電車の中で裸になった男性はその後、公然わいせつの罪で起訴され、金沢地裁で1月28日、懲役6カ月(執行猶予3年)の刑を言い渡された。


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報道によると、男性は昨年9月、仲間6人と裸の集合写真を撮ろうと共謀。富山県高岡市~小矢部市を走行中の電車内で、他の4人とともにほぼ全裸になり、金沢駅でも停車中の電車内でほぼ全裸になって座席に座ったと、裁判所に認定された。



ところで、この男性は裁判中、裸になったのは「仲間内での悪ふざけ」で、他に乗客がいないかを確認したうえで服を脱いだと説明していたという。



もし現場が男性の説明したような状況だったとしたら、その場には「知り合い」しかいなかったことになる。仮の話だが、その瞬間、その場所には、関係者しかいなかったとしても、「公然わいせつ罪」となるのだろうか?坂野真一弁護士に聞いた。



●「公然」とはどういう状態?


「公然わいせつ罪は、刑法174条にあるように、『公然とわいせつな行為をした者』を処罰するものです。



『他の乗客がいないことを確認した』という男性の主張は、この場合、『公然性がないので公然わいせつ罪にはならない』という趣旨での発言だと思われます」



この場合の「公然」とは何だろうか?



「公然わいせつ罪でいう『公然』とは、『不特定または多数人が認識しうる状態をいう』とされています(最高裁昭和32年5月22日決定)。不特定であれば少数でも該当しますし、多数であれば特定人の集団でもかまいません。



また、わいせつ行為を実際に認識する必要はなく、認識する可能性があれば足りるとされています。これは、本罪が、現実に社会生活において形成されている公衆の『性風俗』を保護法益としているためですね。



停車中の電車では、新たな乗客が乗ってくるかもしれませんし、ホームを歩く人から見られる可能性があるため、公然性は認められるでしょう。



また走行中の電車であっても、外部から遮断された状態ではなく、電車の窓を通して外部から状況を認識可能な状況でしょうから、やはり公然性は否定されないと思われます」



そうなると今回は、詳しい事情はわからないが、「公然性がない」という理由で公然わいせつ罪が成立しないとされる可能性は小さいと言えそうだ。



公然わいせつ罪の「公然性」について考える際に、何か参考になる裁判例はあるのだろうか?



「裁判例では、海岸でのわいせつ行為の事例で、海岸から300メートル沖を遊覧船が通過したに過ぎない場合でも、通行人などが来る可能性があるとして、本罪の成立を認めた事例があります。



一方、外部から遮断された場所での特定少数人によるわいせつ映画上映、わいせつ行為実演については、本罪の成立が否定された事例もあります。」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
イデア綜合法律事務所 パートナー弁護士。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則(中央経済社)」。近時は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:イデア綜合法律事務所
事務所URL:http://kasai-hoken.idealaw.jp/