2014年01月29日 12:20 弁護士ドットコム
ラルフローレン、グッチ、アルマーニなど、海外の超有名ブランド製品であることをうたった衣類を、インターネットで販売していた会社の実質的な経営者らがこのほど、商標法違反(販売目的所持)の疑いで警察に逮捕された。
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報道によると、経営者らは昨年8月、北九州市の事務所内で、海外ブランドとそっくりの商標が付いた衣類約3000点を、販売する目的で所持していた疑いが持たれている。警察の調べだと、この会社は複数のショッピングサイトで計28のブランドを取扱っており、正規品の半額ほどの価格で販売。顧客は3年半で14万人、売上は約11億円に及んでいたようだ。
品質と信頼の証である「ブランド」だが、それを逆手にとって「偽ブランド品」でひと儲けしようとする事例は全国で後を絶たない。もし、正規品だと信じて購入したブランド品が、実は偽物だった場合、お金を返してもらうことは可能なのだろうか。また、買ったあとしばらくは気づかずに使っていたが、何かのきっかけで偽物だと判明したような場合はどうだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。
「まず、偽ブランド品を正規品だと信じたことは、法律上『錯誤』にあたりますので、売買契約の無効を主張し、代金の返金を求めることが考えられます。
ただし、この主張は、錯誤について『重過失』がある場合は認められません」
石井弁護士はこのように説明する。思い切ってかみ砕くと、「正規品だと信じていなかったなら、買わなかったはずだ」といえるような場合、契約を無効にできるケースがあるようだ。
では、「重過失があった」というのは、具体的にはどういうことだろうか?
「重過失はたとえば、その品物が正規品に比べて異常に安い金額で売られており、『少し注意すれば偽物だとわかったはずだ』というような場合に認められます。
また、一見して偽物とわかるのにあえて買ったような場合も、重過失が認められるでしょう」
まとめると「錯誤」があれば契約無効で返金してもらえるが、もし「重過失」があれば契約は有効で、返金もしてもらえないということだ。
「また、店側が、偽ブランド品であることを知りながら本物であると偽って販売し、購入者もそれが本物であると信じて購入した場合は、『詐欺』にあたります。
詐欺によりしてしまった売買契約は、後から『取り消す』ことができますので、そう主張し、代金の返金を求めることも考えられます。
ほかに、消費者契約法に基づいて、店側が商品について事実と違う説明をしたという理由で契約を取り消すことも考えられます」
「買った後しばらく気付かずに使っていても、基本的には偽物だと判明した時点で、これらの主張をすることができます。
しかし、タイムリミットがあって、消費者契約法上の取消は『偽物だと判明してから』6カ月以内に、民法上の取消は同5年以内に主張する必要があります。
また、消費者契約法上の取消は『商品を買ったときから』5年、民法上の取消は同20年を経過すると、主張できなくなります」
そうなると、だまされた場合にも、すばやく対応すれば、法律でなんとかなる……?
石井弁護士は「残念ながら現実には、逮捕されるような業者から代金を回収することは困難な場合が多いです。被害に遭わないようにするには、信頼できる店から購入するべきです」とアドバイスを送っていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属 甲南大学法学部非常勤講師
事務所名:石井法律事務所