2014年01月27日 20:50 弁護士ドットコム
アメリカ・コロラド州で今年1月から、21歳以上の成人に対して、大麻を嗜好品として販売することが解禁された。医療用以外で合法化されるのは、全米で初めてだという。大麻の栽培・販売などを許可制で管理し、課税して財源とする狙いがあるようだ。
【関連記事:民族伝統の「入れ墨」で入浴拒否 「合理性を欠く差別」として許されない?】
アメリカではコロラド、ワシントン両州ですでに、2012年におこなわれた住民投票で、「大麻の私的使用」が合法化されていた。ワシントン州でも、今夏ごろに販売解禁となる見通しだという。しかし一方で、大麻による健康被害を危惧する声もあがっている。
日本では現在、大麻取締法によって、取り扱い免許を受けた人以外は大麻の所持・栽培などが規制されているが、「日本も大麻を合法化すべきだ」という意見も根強い。インターネット投票サイト「ゼゼヒヒ」が「大麻の合法化についてどう思う?」というアンケートを実施したところ、回答した374人のうち約8割にあたる291人が「合法化してもいい」と答えている(2014年1月27日20時現在)。
はたして、日本も大麻の所持・栽培などを合法化すべきなのだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。
弁護士ドットコムでは、「大麻の合法化」について、以下の3つの選択肢から回答を選んでもらった。弁護士27人から回答が寄せられたが、次のように<大麻所持・栽培などの「合法化」に反対>とする意見が最も多くなった。
(1)大麻所持・栽培などの「合法化」に賛成 →5人
(2)大麻所持・栽培などの「合法化」に反対 →16人
(3)どちらともいえない →6人
このように、回答した弁護士のうち、約6割にあたる16人が<大麻所持・栽培などの「合法化」に反対>と答えた。次のような意見が見られた。
「大麻は、それ自体ではそれほどの中毒性がないのかもしれませんが、薬物に対する規範意識を鈍らせ、覚醒剤や麻薬への依存の入口になってしまうケースが多いように思います。刑事事件でも、そのような前科の流れを目にします」(秋山直人弁護士)
「大麻の使用は、人体への有害性が低いことや、身体的な依存性が低いことから、容認すべきという考えもありますが、他のより有害性の強い薬物への入口となることが多く、また、精神的な依存性が非常に強いといわれています。薬物の使用は、病院で使用する医薬品も含めて慎重に用いるべきであり、病院で使用する医薬品のような厳しいチェックを経ていない大麻をあえて合法化することは、健康被害を拡大するだけではないかと考えます」(岩間誠弁護士)
「他の依存性薬物に比べて害がないといっても、利益があるわけではない。合法化されることで薬物一般に対しての抵抗心が薄まり、より依存性の高い薬物に手を出す危険性も軽視できない。刑事事件を取り扱っていれば、薬物依存者の悲惨さは身近で見ることになる。その経験からすれば、依存者を増やす危険性が高い大麻の合法化には反対である」(鐘ケ江啓司弁護士)
「社会全体の秩序維持のためを考えれば、やはり大麻は規制すべきでしょう。健康上、どれほど安全であっても、摂取時の社会に対する危険性が低いのでなければ規制は必要でしょう」(岡田晃朝弁護士)
一方、27人の回答者のうち5人の弁護士が、<大麻所持・栽培などの「合法化」に賛成>という意見を支持した。その理由は、次のようなものだ。
「まず大前提として、自分や他人を許容限度を超えて傷つけない行為を処罰するのは例外だという発想が必要だと思います。
そして、大麻を吸う人及び他の人への害という点において、大麻がタバコ・酒より明らかに有害だと言える根拠はないと思います。そうであれば、タバコ・酒が許容限度内とされている社会において大麻を禁止する合理的理由はないと考えます」(齋藤裕弁護士)
「大麻がアルコールやタバコと同等ないしそれ以下の危険性(有害性、依存性、社会的影響等)しかないのであれば、合法化に賛成です。
一般によく言われているように大麻がゲートウェイドラッグになるのは、現在禁制品だからです。健康に対する有害性が低いのであれば、大麻を合法化した後は、アルコールと違いはないでしょう。現在アルコールはゲートウェイドラッグとは言われていません。
また、大麻の規制根拠としてよく挙げられる大麻が暴力団の資金源になるというのも、大麻が禁制品だからです。合法化したらそのような問題はないでしょう。現在アルコールは暴力団の資金源になってはいません。
科学的根拠に基づいて、必要な規制をすれば足りると思います」(細江智洋弁護士)
また、「どちらともいえない」と回答した弁護士は6人だった。次のような意見があった。
「大麻はタバコと比べて健康への害がないという説もあるほどですから、危惧すべきは吸った者の健康被害よりも、人格の変容や幻覚の発生によって家族や社会に迷惑をかけたりすることがないか、ということと、他の薬物使用への入口にならないか、ということなのではないかと思います。
タバコより体にいいなどと言っても、フラフラになって暴力的な行動を取られたら、被害者はたまったものではありませんので。
アメリカでも、医療用大麻を解禁したのは約20州、嗜好用解禁は2州(コロラド・ワシントン)にすぎません。
よって、解禁するにしても医療用からだと思いますし、医療用大麻の必要性について日本の医療現場の声をよく知らないので、なんとも判断しがたいところがあります。
よって、現段階で嗜好用も含めた全面解禁には反対、医療用については『まだ判断できません』というところです」(山岸陽平弁護士)
アメリカでは、相次ぐ解禁の波を受けて、オバマ大統領が「マリファナ(乾燥大麻)は危険ではない」というスタンスを示しているという。今後、アメリカを中心として世界に「大麻の合法化」が広がると、日本での議論にも影響が出てくるかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス)