2014年01月25日 17:20 弁護士ドットコム
輸出自動車の海上輸送をめぐり、大手海運4社が大規模なカルテルを結んでいたとして、公正取引委員会が4社に計約220億円の「課徴金」を命じる方針だと報道されている。このまま額が確定すれば、1つの事件としては国内史上2番目に大きい額になるという。
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カルテルとは、企業間で内密に価格などを決めて競争を避ける「不当な取引制限」のこと。カルテルは、市場経済の根幹を成す「自由で公正な競争」を妨げるため、独占禁止法(独禁法)で禁じられている行為だ。
今回話題になっている「課徴金」は、こうした違反の際に支払いが命じられるものだというが、どのような性質のお金なのだろうか。また、課徴金の金額についてはどんな基準で決められるのか。企業法務にくわしい片上誠之弁護士に聞いた。
「課徴金とは、行政庁である公正取引委員会が、独禁法違反の事業者等に対して課す、金銭的不利益のことをいいます。
課徴金は、あくまで、カルテルや入札談合などの独禁法違反行為を防止する、という行政目的を達するための制度です。
刑事裁判で有罪となった場合に課される刑罰の『罰金』とは、性格が異なります」
課徴金は、独禁法のルールに違反した場合に、行政によって課される「金銭的ペナルティ」といったところだろうか。
さて今回は課徴金が約220億円にのぼると言われているが、その「額」はどうやって決まるのだろうか?
「課徴金の額の算定方法は、独占禁止法に規定されています。
今回は、仮に製造業等の大企業が、商品や役務(サービス)の価格を協定して決める価格カルテル(独禁法違反)を行ったという例で、説明しましょう。
価格カルテルでは、対象となった商品やサービスの売上高を基準として、原則その10%が課徴金となります。
売上高を算定する期間は、カルテルが実行されていた期間です。ただし、期間が3年を超える場合には、直近3年間の売上を基準とします」
仮に金額を計算すると、どんな風になるのだろうか?
「たとえば、カルテルの対象となった商品について年間30億円、直近3年間合計で90億円の売上があれば、課徴金は原則その10%の9億円となります。
もしカルテル期間が5年、その間の売上が150億円だったとしても、課徴金の対象となるのは直近3年間の部分だけです」
思いのほか、バッサリと決まるものにも思えるが……。
片上弁護士は、「この割合はあくまで一例です。違反者が小規模事業者の場合や、業種が小売業や卸売業などの場合、違反行為の類型などで算定率は変わってきます。これらについても、詳細に法律で定められています」と話していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
片上 誠之(かたかみ・さとし)弁護士
上場企業から中堅・中小企業まで、事業者からの依頼案件(相談、交渉、訴訟等)を多く取り扱う。また、窮境に陥った事業の再生を図るため、民事再生や私的整理などの事業再生業務もてがける。
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ilo.gr.jp