2014年01月22日 19:30 弁護士ドットコム
女子高生にマヨネーズをかけたとされる20代の男性会社員が1月上旬、「暴行」容疑で兵庫県警に逮捕され、話題になっている。
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報道によると、会社員は昨年10月、兵庫県川西市の阪急・川西能勢口駅のエスカレーターで、高校1年の女子生徒の背中にマヨネーズをかけた疑いが持たれている。会社員は容疑を認めているという。同駅付近では、女性が髪やカバンにマヨネーズをかけられる事件が他にも複数あり、警察は関連を調べている。
いきなり他人からマヨネーズをかけられるなんて大迷惑も甚だしいが、一般的に「暴行」といえば、殴る蹴るなどの暴力をイメージすることが多そうだ。他人にマヨネーズをかける行為がなぜ「暴行」になるのだろうか。刑事事件にくわしい徳永博久弁護士に聞いた。
「刑法には、『暴行』を要素とする犯罪がいくつもありますが、実はそれぞれの犯罪によって、『暴行』が意味する内容は大きく違います」
徳永弁護士はこのように指摘する。それでは、今回のマヨネーズ事件で問題となっている「暴行」は、どんな意味なのだろうか?
「刑法の暴行罪が前提としている『暴行』は、不法な『有形力』が人の身体に加えられるという意味で、『広義の暴行』といえます。
その内容は、殴る蹴るといった行為を当然含みますが、『人の身辺を脅かすもの』であれば足り、必ずしも相手の身体に接触することまでは要求されていません」
この有形力とは、ざっくりいうと「物理的な力」のことだが、マヨネーズをかけることは「他人の身体に、不法な有形力を加えた」ことになるのだろうか?
「過去の裁判例では、他人につばを吐きかける行為や、他人に食塩をふりかける行為についても、『不法な有形力が人の身体に向けて加えられた』として、暴行罪の成立を認める判決が下されています。
こうしたケースから考えると、他人にマヨネーズをかける行為も『人の身辺を脅かすもの』として、他人につばを吐きかける行為や、他人に食塩をふりかける行為と同様、暴行罪が成立する可能性もあります。
今回、警察はそのように判断し、被疑者を逮捕したのだと思われます」
徳永弁護士はこのように指摘していた。
暴行という言葉から受ける印象は人それぞれかもしれないが、刑法においては「殴る蹴る」にとどまらず、幅広い内容が「暴行罪」となるようだ。この点については、注意をしておいたほうがいいだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
德永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検・さいたま地検検事を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/