2014年01月21日 17:40 弁護士ドットコム
1月中旬の「成人の日」に、今年も全国各地で開かれた成人式。晴れの舞台に羽織姿で颯爽と……だけなら良いのに、わざわざ「模造刀」を持ち込んで、御用になってしまった新成人がいたようだ。
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日刊スポーツによると、新成人の男性が静岡県富士宮市役所で開かれた成人式に、刃渡り約73センチの模造刀を持ち込み、現行犯逮捕されたという。男性は容疑を認め、「家にあったので持ってきた」と供述しているそうだ。式の進行には影響がなかった模様だが、とんだ人騒がせな事件だ。
しかし、「模造刀」と言えば愛好家も多数いるし、コスプレなどの趣味でもよく使われているような気がする。たとえニセモノの刀でも、銃刀法違反となってしまう場合があるのだろうか? 万が一にも警察沙汰にならないように、知っておくべき銃刀法のあれこれについて、刑事事件にくわしい山田直子弁護士に聞いた。
「刃体の長さ6cmを超える『刃物』を正当な理由なく携帯する行為は、銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)22条に反します。その法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金とされています(同法31条の18第3号)」
このように山田弁護士は、銃刀法の規制について説明する。模造刀の携帯も、銃刀法22条違反にあたるのか。
「銃刀法にいう『刃物』とは、一般的には、人を殺傷する能力を持ち、鋼またはこれと同じ程度の性能(鋼質性)があり、片刃または両刃の器物をいいます。模造刀は、殺傷能力や鋼質性を欠くため、この『刃物』にはあたりません」
山田弁護士はこのように指摘する。それでは、模造刀を持ち歩くことは、何に違反するのだろうか?
「銃刀法は、『模造刀剣類』の携帯も、正当な理由がある場合を除き、禁止しています(同法22条の4)。つまり、『刃物』に当たらなくとも、『模造刀剣類』を携帯していれば、銃刀法22条の4に反する行為として、20万円以下の罰金を科される対象となります(同法35条2号)」
ただ、ひとくちに模造刀と言っても、本格的な金属製もあれば、土産屋で売っている木製のおもちゃもある。どこまでが対象に含まれるのだろうか?
「『模造刀剣類』の定義は、『金属で作られ、刀剣類に著しく類似する形態を有するもので、内閣府令で定めるものをいう』(同法22条の4)とされています。
そして、内閣府令である銃刀法施行規則では、『模造刀剣類』について、『刀、剣、やり、なぎなたもしくはあいくちに著しく類似する形態を有するものまたは飛び出しナイフに著しく類似する構造を有するもの』(同法施行規則105条)と定義されています。
つまり、刀剣を模したものであっても、金属製でないものや一見して人を切れそうにないものは、銃刀法の取締対象となる『模造刀剣類』にはあたりません。
今回、模造刀を持っていて銃刀法違反の嫌疑で現行犯逮捕された、ということは、『模造刀剣類』といえる程度の、リアルな模造刀を持っていたものと思われます」
山田弁護士はこのように指摘していた。ちょっとした演出などで「模造刀」を使いたいというときには、こうした規制にも十分留意するべきだろう。
明治9年の「廃刀令」から、もう140年近く経つ。当時「刀は武士の魂」と猛反対した士族たちが、もし今回の騒動を目にしたなら、いったいどんな風に感じただろうか……。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
山田 直子(やまだ・なおこ)弁護士
奈良弁護士会所属(元検事)
事務所名:弁護士法人松柏法律事務所生駒事務所
事務所URL:keiji-shohaku-law.jp/