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ネイルに「ブランドロゴ」を描いたら、商標権や著作権の侵害になる?

2014年01月21日 12:00  弁護士ドットコム

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ここ最近、個性的で創作性に富んだ「ネイルアート」をよく見かける。花や自然の風景などをモチーフにしたものなど、まさに「十人十色」のおもしろさ。ネイルアートが伸びている理由の一つとして、自分の好みに合わせて描くことができる自由度の高さがあるだろう。


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ただ、この自由度の高さについては、法的に悩ましい面もある。たとえば、あるネットの相談サイトには、ネイルサロンの開業を検討している人から、「客のリクエストに応じてファッションブランドなどの『ロゴ』を描いた場合、商標法や著作権法などに違反するおそれはないか」という相談が寄せられていた。



こうした場合、商標権や著作権を侵害してしまうことになるのだろうか。知的財産権にくわしい井奈波朋子弁護士に聞いた。



●「商標登録」されているロゴを使っても大丈夫?


まず、商標権の問題から尋ねてみることにした。ファッションブランドのロゴであれば商標登録されている場合がほとんどだろうが、問題は生じないのだろうか?



「ロゴが商標登録されていたとしても、商標権の範囲は、登録で指定した商品やサービスに限定されます。すなわち、他人の商標について、登録で指定された商品やサービスの出所を表示するために用いると、商標権侵害となるのです」



つまり、商標登録で指定した商品が「洋服」であれば、そのロゴは、「洋服」に対して使う範囲でしか商標権を主張できないというわけだ。



「たとえ『洋服』のブランドのロゴを描いたとしても、それが『ネイル』の上であれば、『洋服』という商品の出所を表示するためにロゴを使ったとはいえないでしょう。ですから、商標権侵害にはならないと考えられます」



●ブランドロゴは「著作物」なのか?


では、著作権の面ではどうだろう。



「ロゴには、デザイン文字(ロゴタイプ)と図案(ロゴマーク)がありますが、ロゴタイプのような字体には一般に著作権は認められないと考えられます」



ロゴマークについては、どうなるのだろうか?



「そのロゴマークにもよるため一概にはいえませんが、創作性が認められれば、著作権が生じます。



ただ、一般的に、ネイルサロンで気軽に『描いて』と頼めるような単純なロゴマークであれば、ありふれたもので創作性はなく、著作権により保護されない可能性が高いと考えられます」



井奈波弁護士はこのように解説したうえで、「今回、事例にあがっているような形でロゴをネイルに描いたとしても、おおむね、商標権や著作権の侵害にはならないと考えられます」と、結論づけていた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
井奈波 朋子(いなば・ともこ)弁護士
出版・美術・音楽・ソフトウェアの分野をはじめとする著作権問題、商標権、ITなどの知的財産権や労働問題などの企業法務を中心に扱う。フランス法の調査、翻訳も得意としている。
事務所名:聖法律事務所
事務所URL:http://shou-law.com/