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「60歳までに遺書を書きたい」と松本人志さん 「法的に有効な」遺言書の条件とは?

2014年01月14日 21:00  弁護士ドットコム

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「60歳までにしたいことは、遺書を書くこと」。昨秋に50歳になったお笑いタレントの松本人志さんが、テレビ番組で発言したことが話題になっている。ちょうど20年前に『遺書』というタイトルの本を出してベストセラーになった松本さんが、本物の遺書に言及したことでインパクトが大きかったようだ。


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スポーツニッポンの記事によると、松本さんが「遺書」という言葉を口にしたのは、1月13日夜にフジテレビ系で放送された「HEY!HEY!HEY! 2014 超豪華アーティストにゴリゴリ絡みましたSP」。「60歳までにやりたいことは?」という質問に対して、「オレがやることって、もうそろそろ遺書を書くこと」「だって、いつどうなるか分かれへんねんもん」などと語ったのだという。



松本さんは「大した財産もないですけど、残された人たちのことを考えないといけない」と話していることから、この「遺書」という言葉は、遺産相続にともなう「遺言書」のことだろう。だが、法的に有効な遺言書とするには、一定の条件を満たす必要がある。その条件とはどんなものか。遺言書作成のポイントを、寄井真二郎弁護士に聞いた。



●「遺言書」にはいくつかの種類がある


「実は、遺言書には複数の種類があります。その中で、比較的よく知られているのは、公正証書遺言と自筆遺言でしょう」



公正証書遺言とは、公証人役場で、公証人に作成してもらう遺言書のことだ。二人以上の証人の立ち会いのもとで口述した遺言の内容を公証人が筆記し、各自が署名押印する。「公証人が関与するために、法的な問題が生じることは少ない」という。



一方、自筆遺言とは文字通り、遺言者が「自筆」でしたためる遺言書のことで、自分一人で作成できるという点で簡単だ。しかし、自筆遺言は「遺言者がその全文、日付及び氏名をすべて自署し、押印する必要がある」という要件を満たさないといけない。それに加えて、次のような問題があると、寄井弁護士は指摘する。



「自筆遺言のなかには、『相続させる』とか『遺贈する』という明確な文言ではなく、ただ『任せる』とか『委ねる』などと記されていて、趣旨がはっきりしないものもあります。また、法的に有効な遺言なのかどうか、そもそも遺言者が作成したものであるかどうか、遺言作成時に遺言能力を有していたのかなどの点について、相続人のあいだで争われることも少なくありません」



●遺言書をつくるときに気を付けたい「遺留分」


また、相続に関して注意が必要なのが、「遺留分」だ。



これは、配偶者や子など一定の法定相続人に認められている、最低限相続できる割合のこと。遺留分の割合は、法律で決められている。たとえば、3人の子のうちの1人だけに「全財産を相続させる」という遺言があったとしても、残りの2人は自分の「遺留分」を主張して、その分を請求することができるのだ。



したがって、その後のトラブルを避けるためにも、自筆遺言を残すときには、残された者たちの「遺留分」にも配慮したほうが望ましいといえる。



「法的に有効な遺言書を作成するためには、(1)民法が要求している書式に従って作成すること、(2)趣旨が明確な内容の遺言を作成すること、(3)遺留分に配慮した遺言とすること、などの点に注意する必要があるといえます」



このように寄井弁護士は説明したうえで、「費用はかかりますが、公正証書遺言を作成したほうが無難といえます」と話す。そして、「慎重を期すならば」と、次のようなアドバイスを送る。



「公正証書遺言の場合でも、遺言能力が争われることがありますので、判断能力についての診断書等を取り付けておくべきです。また、遺留分に配慮した遺言を作成するのであれば、弁護士に事前に相談するほうがいいでしょう」



松本さんの「遺書」発言に触発されて、「自分も遺言書を書いてみようか」と考えた人もいるかもしれない。しかし、せっかく遺言書を作っても、法的に有効でなければ意味がない。本気で遺言を考えている人は、その要件をきちんと確認しておくほうがよさそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
寄井 真二郎(よりい・しんじろう)弁護士
離婚・相続等の家族関係事案のみならず、金融・企業法務、交通事故、建築瑕疵、知的財産権等幅広く業務を行っている。「家庭弁護士の訟廷日誌」、「田舎弁護士の訟廷日誌」というブログも執筆中。
事務所名:弁護士法人しまなみ法律事務所
事務所URL:http://shimanami-law.jp/