2014年01月13日 20:00 弁護士ドットコム
一番目とされる患者の発生から約100年、公害病に指定されてから45年――「イタイイタイ病」をめぐる問題が、ようやく「全面解決」にたどり着いた。原因企業である三井金属鉱業と被害者団体が昨年12月、救済策などを盛り込んだ合意書を交わしたのだ。
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イタイイタイ病は日本の四大公害病のひとつで、1910年代に富山県の神通川流域で発生した。骨が軟化し、体のあちこちが骨折するため、患者が「痛い痛い」と泣き叫んだことからその名がついたという。その後の調査で、三井金属神岡鉱業所(現・神岡鉱業)から排出された重金属のカドミウムが原因と判明した。
国は1968年にイタイイタイ病を公害病と認め、これまでに196人が認定を受けた。しかし、前段症状とされる「カドミウム腎症」は救済対象にされてこなかった。報道によると、今回の合意書には、腎機能低下の度合いなどで条件を満たした人を対象に、三井金属鉱業から一人当たり60万円の一時金を支払うことが盛り込まれた。
国内で初めて指定された公害病は、ようやく決着への道筋がついた。これまで最前線でこの問題に取り組んできた弁護士はどのように感じているのだろうか。イタイイタイ病弁護団事務局長を務める水谷敏彦弁護士に聞いた。
「イタイイタイ病をはじめ未曾有のカドミウム被害を蒙った神通川流域の住民は、1972年8月のイタイイタイ病訴訟勝利判決を梃子(てこ)にして、原因企業との間で3つの誓約書・協定書を結びました。
住民は、その誓約書・協定書に基づいて、裁判後40年あまりにわたり、健康被害救済、汚染土壌復元、発生源対策という3本柱の取り組みを進めてきたのです。
昨年12月の全面解決の合意は、こうした被害住民の長期にわたる粘り強い取り組みの成果です」
水谷弁護士はこのように、被害者たちの歩んできた道を振り返る。今回の合意については、どのように評価しているのだろうか?
「被害住民は、健康被害救済の面で、イタイイタイ病の前段症状である『カドミウム腎症』も公害病に指定して救済するよう国に求めてきましたが、残念ながらこれは実を結びませんでした。
しかし、今回の合意で、原因企業が『健康管理支援のための一時金を支給する』という形の救済制度が創設されることになりました。
この『60万円』という金額に対する評価は分かれるかもしれませんが、この制度による一時金の支給対象者は500名を超えると推定され、カドミウムによる腎機能影響を受けた人々に対する相応の救済と言ってよいと思われます」
水谷弁護士はこのように述べていた。この合意は、被害住民らの取り組みの歴史的到達点として、今後も長く語り継がれていくことになりそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
水谷 敏彦(みずたに・としひこ)弁護士
1956年富山県氷見市生まれ。氷見高校、東北大学法学部卒業。1988年弁護士登録(富山県弁護士会)。富山県弁護士会副会長、人権擁護委員会・刑事委員会各委員長等。2007年~イタイイタイ病弁護団事務局長。
事務所名:富山中央法律事務所
事務所URL:http://www.tomiho.co.jp/index.php