2014年01月10日 15:30 弁護士ドットコム
スカートの中などをこっそり撮影する、卑猥(ひわい)な盗撮の取り締まりを強化するため、京都府は昨年12月、「迷惑行為防止条例」の改正案を発表した。
【関連記事:「路上喫煙者」をツイッターにアップ!? 正義ならば「盗撮・公開」は許されるのか?】
現時点での京都府の条例でも、卑猥な目的の盗撮は規制されているが、それは(1)路上や駅などの「公共の場所」や、(2)電車やバスなどの「公共の乗物」で盗撮するケースに限定されている。
府は「現行の条例が適用できない盗撮事案がある」として、これまで対象外だった、職場のトイレや更衣室のような「公共の場所と認められない」場所での盗撮を、改正案で新たに処罰対象に加えようとしている。
弁護士はこの改正案をどう見ているのだろうか。長谷川裕雅弁護士に聞いた。
「現行の京都府迷惑防止条例では、卑猥目的での盗撮が規制されている場所が、公共の場所または公共の乗り物だけに限定されています。
そのため、公共の場所と認められない学校の教室や職場などでの卑猥な盗撮は、軽犯罪法による取締りとなります」
長谷川弁護士はこのように述べる。軽犯罪法でそうした盗撮が取り締まられているのに、なぜ条例改正が必要なのだろうか?
「公共の場所での盗撮行為に対する京都府迷惑防止条例の罰則は、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金(常習の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金)です。
他方、軽犯罪法の盗撮に対する罰則は、拘留または科料です(拘留とは1日以上30日未満の身体拘束、科料とは1000円以上1万円未満の金銭的罰則)。
このように軽犯罪法の罰則は、懲役刑もなく、金銭的代償もわずかです。
たとえば本屋や駅構内などでスカートの中の下着を盗撮した場合は重く処罰され、職場のトイレで半裸体を盗撮した場合は軽く処罰される。結論の妥当性が疑われる状況でした」
長谷川弁護士はこのように指摘する。その2つの状況を比べると、たしかにちぐはぐにも思えるが、そもそも処罰を厳しくすべきなのだろうか?
「盗撮事件で被疑者が捕まれば、所持している画像は警察によって削除されます。しかし画像がネット上にすでにアップされていた場合、流布している画像を完全に削除するのは不可能です。人知れず被写体となって回復不可能な被害を受ける盗撮は、厳しく取り締まる必要があります。
盗撮事件では、余罪の有無や数によって、厳しい処分がなされることがあります。盗撮事件といっても事件ごとに個性があります。条例改正によって取締りの強化が図られることは、個別事件の背景事情に応じた処罰を下すという観点では、意味のあるものです。再犯率の低下も期待できると思います」
なお、こうした動きは、全国に広がりつつあるようだ。長谷川弁護士は「京都府だけでなく、他の都道府県も公共の場所における盗撮行為の規制のみでは不十分だと考えているようです。今年の1月6日現在、改正京都府条例と同様に公共の場所以外でも盗撮行為を規制している自治体は、27都道府県に上ります」と話していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
長谷川 裕雅(はせがわ・ひろまさ)弁護士
東京弁護士法律事務所 代表
早稲田大学卒業後、朝日新聞記者。男女間のトラブルを幅広く取り扱う。テレビ・新聞・雑誌の事件解説多数。著書に「なぜ酔った女性を口説くのは『非常に危険』なのか?」(プレジデント社刊)など。
事務所名:東京弁護士法律事務所
事務所URL:http://danjotrouble-bengo.com/