2014年01月08日 16:20 弁護士ドットコム
安倍晋三首相は昨年12月26日、東京・九段の靖国神社に参拝した。ちょうど1年前に首相に就任して以来、初めての「靖国参拝」だった。報道によると、安倍首相は「内閣総理大臣安倍晋三」と記帳し、私費で献花料を納めたという。
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これまで歴代首相の「靖国参拝」をめぐっては、国内外で賛否両論があったが、今回も激しい議論が起きている。はたして、安倍首相の靖国参拝は妥当といえるのだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士たちに意見を聞いた。
弁護士ドットコムでは、安倍首相の靖国神社参拝に賛成かどうか弁護士にたずね、以下の3つの選択肢から回答を選んでもらった。15人の弁護士から回答が寄せられたが、次のように<安倍首相の「靖国参拝」に反対である>とする意見が最も多かった。
(1)安倍首相の「靖国参拝」に賛成である →3人(2)安倍首相の「靖国参拝」に反対である →12人(3)どちらでもない →0人
このように、回答した弁護士の80%にあたる12人が<安倍首相の「靖国参拝」に反対である>と答えた。次のような意見が見られた。
「靖国神社は、戦後宗教法人となったが、もともと日本軍が管理していたという歴史的事実、そしてA級戦犯14人が合祀されている事実が重大である。中国・韓国が、さっそく安倍首相の参拝に強く反発したが、当然予想された事態である。この度の安倍首相の参拝は、国益を大きく害するという意味でも、あえて“愚行”と断じておきたい」(伊佐山芳郎弁護士)
「これまでも、総理大臣が靖国神社を参拝した際は、中国や韓国などのアジア諸国から反感を買いました。日本の過去の歴史を考えた場合、アジア諸国が総理大臣の靖国神社参拝に反感を覚えるのは当然だと思います。現在の世界の情勢を考えると、アジア諸国とは、良好な関係を築くことが必要だと思います。総理大臣の軽率な行動により、アジア諸国との関係を悪くするのは、日本にとって、マイナスだと思います」(林高弘弁護士)
「靖国神社は、戦前、政府と一体となって軍国主義の精神的支柱となった歴史があり、戦後、A級戦犯が合祀されています。そのような靖国神社に内閣総理大臣が参拝するというのは、戦没者の追悼という以上の政治的意味を有する行為であり、政教分離の観点からも許されないと考えます。戦没者追悼は、国立の追悼施設を別に整備して行えば良いと思います」(秋山直人弁護士)
一方、15人の回答者のうち3人の弁護士が、<安倍首相の「靖国参拝」に賛成である>という意見を支持した。その理由は、次のようなものだ。
「合憲と考える。政教分離原則を定めた憲法20条3項には反しない。違憲か否かを考えるにあたっては、津地鎮祭訴訟の判決で示された『目的効果基準』でもって考えるべきである。これは、その行為がその宗教(靖国神社の場合は神道)をもっと普及させようとし、または他の宗教的活動を妨害しようとする効果を実際に上げる可能性がある場合は違憲であるとするものである。この基準で判断すると合憲となる。私見ではお国のために亡くなった方々がまつられている神社に首相が参拝して良いと考える」(大和幸四郎弁護士)
なお、<どちらでもないという>という意見は0人だった。
首相の靖国参拝をめぐる評価には、歴史的経緯のほか、憲法が求める政教分離原則に反するのではないかといった観点が複雑に絡み合っている。安倍首相がフェイスブックで靖国参拝を報告したところ、数万規模の「いいね!」がついたということだが、弁護士たちは必ずしも「いいね!」とは思っていないようだ。
(弁護士ドットコム トピックス)