2013年12月28日 18:00 弁護士ドットコム
就職面接に落ちたことを、その会社の社員に言いふらされた――。12月中旬、こんな内容のブログが公開され、ネットで大きな反響を呼んだ。面接した会社は、すぐに事実を認めて謝罪し、社員を12月18日付でけん責処分したと発表した。
【関連記事:ドワンゴが入社試験で「受験料」徴収――報酬受領を禁じた「職安法」に違反しないの?】
問題の会社は、料理レシピサイトで有名な「クックパッド」。同社の発表によると、約2年前に同社の入社面接を受けた応募者が不採用になったことについて、クックパッドの社員が知人に話してしまったのだという。
採用結果と言えば、取り扱いに慎重さが求められる個人情報だ。今回のように、採用担当者が社外の知人にもらしてしまった場合、言いふらされた人は、その会社に対して損害賠償を請求するなど、法的な措置を取ることができるのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。
「特定の企業の採用面接に応募した事実や、その採否の結果は、いずれも応募者の個人情報です。面接をした企業が、それらの情報を社外の第三者に伝えるべき特段の必要性はおよそ考えられません。
応募者にとって、その時点でどんな業種に求職しているのか、どの企業に応募し、どんな結果が出たのかは、場合によっては秘密にしておきたい情報でしょう。
もし、そのような情報が、面接した企業の従業員の軽はずみな言動により社外へ漏えいし、結果として、応募者が何らかの具体的な損害を被った場合は、その漏えい行為をした従業員に損害賠償責任が発生する可能性があります」
今井弁護士はこのように指摘する。それでは、「具体的な損害」が発生しなければ、損害賠償は認められないのだろうか?
「目に見えるような算定容易な損害がなかったとしても、不採用の結果という情報は、通常は応募者が第三者に知られたくない情報です。
そのような情報が漏えいした結果、名誉やプライバシーを侵害され、精神的損害を被ったという主張は、その漏えいの範囲など諸般の事情にもよりけりですが、相応の理由があると思われます。
さらに、漏えいした従業員が、その勤務先の事業の執行について漏えいした場合や、あるいはその勤務先の情報管理体制に落ち度があった場合は、その勤務先の企業自体が『使用者責任』を問われ、損害賠償責任を負う可能性もあります」
不採用の結果を他人に伝えれば、場合によっては企業の法的責任問題にもなってしまうようだ。応募者の信頼にこたえる意味でも、こうした秘密はきちんと守らなければならないと言えそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
平成11年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における個人情報保護運営審議会、開発審査会の委員歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html