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著作権侵害の「非親告罪化」にTPP参加国の大半が賛成!? コミケに迫る危機とは?

2013年12月28日 15:30  弁護士ドットコム

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環太平洋経済連携協定(TPP)への参加によって、「著作権侵害が非親告罪化される」という話の現実味が、いよいよ増してきた。内部告発サイト「ウィキリークス」が11月中旬に暴露した“TPPの秘密交渉文書”に、参加12カ国のうち10カ国が非親告罪化に賛成していると書かれていたのだ。


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日本の著作権法違反は「親告罪」とされ、権利を侵害された人が告訴してはじめて、起訴・処罰されるルールだ。しかし「非親告罪化」が実現すれば、国が告訴を待つことなく、独自の判断で違反者を取り締まることが可能になる。



多くの関係者が真正と受け止めているウィキリークス文書では、親告罪化に反対しているのは今のところ、日本とベトナムだけらしい。もし、著作権侵害の「非親告罪化」が実現したら、どんな影響があるのだろうか。著作権法にくわしい福井健策弁護士に聞いた。



●コミケの「パロディ同人誌」が危ない


「国内で最初に挙がったのは、『コミケなどのパロディ同人誌が危ない』という危惧の声でした。夏冬で各50万人以上もの入場者を集めるコミックマーケットですが、そこで売られる膨大な数の同人誌の75%までが、既存作品の何からのパロディであるとされます。



同人誌はほぼ、オリジナル作品側の許可なく制作・販売されますが、フランスやアメリカと違い、日本には一定の基準でこうした二次創作を許す規定はありません。ですから、裁判所の過去の判断に従えば、無断翻案などで違法となる可能性は十分あります。



しかしこれまで、やり過ぎて叩かれるケースもありましたが、おおむねオリジナル作家や出版社は、こうしたパロディ同人誌を『黙認・放置』してきました。それは、同人誌は原作の最大のファン達がおこなう活動であり、時に原作の人気を高める効果もあると感じてきたからでもあります」



●パロディだけでなく、ネット全般に関わる問題


「しかし、権利者が処罰を望んでいなくても起訴・処罰が可能になる『非親告罪化』の下では、こうしたグレー領域での原作側とパロディ側の『あうんの呼吸』が崩れないか、特にパロディ作品に反感を抱く第三者が通報などをする恐れから、委縮が広がるのではないか、と懸念されたのです。



これは実はパロディに限らず、研究・教育・企業活動やデジタル・ネットでの軽微な侵害全般に言えることかもしれません。



非親告罪化など、TPPによって著作権の『強化』が進むようだと、日本でも米国の『フェアユース』のような著作権の柔軟な例外規定を取り入れよ、という声が高まるかもしれませんね。



また、パロディ同人誌に一定のお墨付きを与えようという赤松健さん提唱の『同人マーク』のような、オリジナル作家側の取り組みも要注目です」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
福井 健策(ふくい・けんさく)弁護士
骨董通り法律事務所 代表パートナー
弁護士・ニューヨーク州弁護士。日本大学芸術学部客員教授。「著作権とは何か」「著作権の世紀」(集英社新書)、「ネットの自由vs.著作権」(光文社新書)ほか知的財産権・コンテンツビジネスに関する著書多数。Twitter:@fukuikensaku
事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com