2013年12月27日 17:00 弁護士ドットコム
通勤電車で、マスクをした人を見かけることが増えてきた。風邪やインフルエンザが流行する季節の到来だ。うがいや手洗いなど予防策をとっても、職場などでウイルスに感染してしまう場合もあるだろう。
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ネット上のQ&Aサイトには、インフルエンザをおして職場に出てきた同僚から、インフルエンザをうつされ、自分が仕事を休むことになってしまった、という相談も寄せられている。
もし、同僚からインフルエンザをうつされたのが明らかだとしたら、治療費や休業補償などを損害賠償として請求できるのだろうか。城島聡弁護士に聞いた。
「もし、インフルエンザの感染元がその同僚であるとはっきりしているのであれば、損害賠償請求も十分に可能だと思います」
城島弁護士はこのように述べる。どうしてそう言えるのだろうか。
「インフルエンザは強い感染力を持つ疾患なので、普通の事業者であれば、職場の健康管理のため、感染者を完治するまで出勤させないように指導することでしょう。また、感染が疑われる者に対しては、医師の診察を受け、その診断を職場に報告するよう周知することでしょう。
同僚がこのような指導に反して、無理に病気をおして出社したり、あるいは職場に感染の事実を隠して出社してきたりした場合には、職場の指導に従わなかったという点において過失があると考えてよいでしょう。
こういった場合、その同僚に対して治療費や休業補償等を損害賠償として請求することも十分にできると思います」
それでは、職場がそういった点に無頓着だったら、どうなのだろうか?
「職場によっては、感染予防の周知徹底がなされていなかったり、あるいは、インフルエンザであることをわかっていながら、出社を命じたりするところもあるかもしれません。
その場合には、同僚に責任を問うことは困難かと思いますが、代わりに、職場に対して、従業員の健康保持に必要な配慮をしなかったという意味において、損害賠償請求をすることができると考えます」
城島弁護士はこのように、インフルエンザにかかった従業員の責任や職場の管理責任を強調していた。
もちろん本当に訴訟をするのは手間がかかるうえ、感染経路の立証など難しい側面はある。まずは、こうした責任について職場で周知徹底し、「インフルエンザにかかったら治るまで休む」という意識を浸透させるのがよいのではないだろうか。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
城島 聡(じょうじま・さとし)弁護士
平成12年司法試験合格、司法修習を経て、平成14年10月に弁護士登録。弁護士登録後は、交通事故・医療過誤を専門とする古田総合法律事務所にて研鑽を積む。平成23年10月に赤坂葵法律事務所を開設し、現在に至る。現在も、交通事故や医療過誤等、高度な医学的知識を必要とする難事件の解決に取り組んでいる。
事務所名:赤坂葵法律事務所
事務所URL:http://www.aoilaw-office.com/