2013年12月25日 18:00 弁護士ドットコム
事故を起こしたまま現場から逃げ去ってしまう「ひき逃げ」の被害が後をたたない。12月にも女性漫才コンビ「ハイヒール」のモモコさんがタクシーに乗っていてひき逃げにあい、左足首を骨折した(全治6週間)と報じられ、話題になった。
【関連記事:居酒屋で勝手に出てきた「お通し」 代金を支払う必要ある?】
警察庁の統計などによると、2012年にひき逃げ事件は2万件以上も起きている。事故後に逃走する動機は「事故を起こしたことが怖かったから」「被害が大したことはないと思ったから」といった理由が最も多い。飲酒運転をごまかすための逃走も少なくないという。
「ひき逃げ」は、単なる交通事故とは一段違う重大な犯罪といえそうだが、具体的にはどれぐらいの罰則が科せられるのだろうか。交通事故にくわしい前島申長弁護士に聞いた。
「いわゆる人身事故(人の死傷を伴う交通事故)が発生した際に、運転者が、負傷者の救護をすることなく現場から離れることを『ひき逃げ』といい、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(道路交通法117条1項)。
また、人の死傷がその運転者の運転に起因する場合は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(同117条2項)」
最大10年の懲役というのは、相当な刑罰といえる。大まかな「相場」のようなものはあるのだろうか。
「軽微なひき逃げ事案の場合、略式裁判で罰金刑(30万から50万程度)となるケースがほとんどです。
しかし、単純なひき逃げ事案であっても、死亡事案や重篤な後遺障害が残る怪我を負わせたような場合は、通常裁判となり、懲役刑となる可能性が高くなります。
また、もし運転者が飲酒していた場合には、ほぼ100%に近い確率で通常裁判となり、懲役刑が科されることになります」
「逃げる」ことの罪の重さが伝わってくる話だ。
「さらに、飲酒事案で死亡事故の場合には、道交法違反だけでなく、自動車運転過失致死罪(7年以下の懲役)や危険運転致死傷罪(致傷は15年以下、致死は20年以下の懲役)に問われることになりますので、実刑判決となることもあります」
事故の責任を免れるため逃げる人もいるようだが、警視庁の統計によると、2012年に発生したひき逃げ死亡事件170件中、じつに167件が検挙されている。逃げられるとは、思わないほうがよさそうだ。
前島弁護士は「なお、ハイヒールモモコさんのケガは全治6週間とのことですので、通常であれば略式裁判で罰金刑が科されるケースと思われます。ただ、逃げた運転手が飲酒運転などをしていた場合には、通常裁判で懲役刑に処せられることもあると思われます」と話していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・労災事故などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。交通事故については、被害者側の損害賠償請求の他に加害者側の示談交渉・刑事弁護も扱う。
事務所名:前島綜合法律事務所
事務所URL:http://maeshima.lawer.jp/