2013年12月19日 14:51 弁護士ドットコム
これまで異性間の問題とされがちだったセクハラだが、その裏側で、同性の「性的な言動」によって、嫌な思いをしていた人も多いかもしれない。厚生労働省は、現在見直しをおこなっている男女雇用機会均等法の指針の中に、新たに「同性間のセクハラの禁止」を明記する方針だという。
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読売新聞によると、今回の見直しによって、女性上司が部下の女性に「結婚はまだなの?」「子供は?」と尋ねることも、「セクハラ」に含まれるようになるという。また、男性上司が部下の男性に「男ならしっかりしろ」「男のくせに」など叱咤するような、「性別役割分担意識」にもとづいた発言もあてはまるそうだ。
ここで例示されているのは、上司の部下に対する発言だが、同じ立場の同僚に「結婚はまだなの?」と聞くことも、セクハラになってしまうのだろうか。新しい指針に「同性間のセクハラの禁止」が明記されたら、どんなことに注意する必要があるのか。菊池麻由子弁護士に聞いた。
「男女雇用機会均等法上のセクハラは、法律上、異性間のセクハラに限定されていません。したがって、現状でも、『同性間のセクハラ』は、均等法上のセクハラに含まれています」
このように菊池弁護士は説明する。つまり、いまでも法的には、「同性間のセクハラ」が禁じられているというのだ。
「もっとも、今後、均等法の指針の中に新たに『同性間のセクハラの禁止』が明記されれば、それがより明確になり、企業もさらなる対策が必要となる場合もあるでしょう」
では、新しい指針ができたら、どのような点に注意すればいいのだろう。
「均等法上のセクハラは、労働者の『意に反する』性的言動が対象となりますので、セクハラに該当するか否かは、相手の判断(感じ方)が重要となります。
相手の感じ方は、個人間で差があり、他人にはわかりづらい場合もあるでしょう。しかし、たとえば、『結婚や出産について聞かれたくない』と感じる方がいることは事実です。したがって、『意に反する』可能性がある場合には、結婚や出産について聞くことは避けたほうがいいでしょう」
セクハラというと、上司から部下へというイメージが強いが、同僚同士の場合でも、セクハラにあたるのだろうか。
「上司の部下に対する発言に限らず、同じ立場の同僚同士の発言も、セクハラにあたり得ます」
菊池弁護士はこう述べる。同僚への発言もセクハラになる可能性があるというのは、なかなか大変だが、結局のところ、セクハラにあたるかどうかのポイントは、「相手がどう感じるか」なのだろう。
部下や同僚が、自分の言動をどう感じているのか。そのことをできるだけ正確に把握するためにも、日頃のコミュニケーションが大事だといえそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
菊池 麻由子(きくち・まゆこ)弁護士
東京弁護士会所属 平成15年10月弁護士登録
労働事件、家事事件、マンションに関する問題を中心に、広く一般民事事件を扱う。
事務所名:菊池法律事務所
事務所URL:http://www.kikuchi-law-office.com/