2013年12月17日 16:01 弁護士ドットコム
脱原発などを訴える全国33の市民団体に、9月中旬から11月上旬にかけて、253万通以上ものメールが送り付けられる「サイバー攻撃」が仕掛けられていたことが判明した。一番多く送りつけられた団体には何と約149万通もの迷惑メールが届いたという。
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大量のメールは、メールマガジンの登録などの際に「確認メール」が自動的に送られる仕組みを悪用して送られた。特殊な攻撃用のソフトを使って、市民団体のメールアドレスでメールマガジンに登録したり、他のウェブサイトの問い合わせ欄に書き込んだりして、膨大な量の確認メールが市民団体に届くように仕組まれたのだという。
このような大量の迷惑メールを送りつける「サイバー攻撃」によって、受信箱がいっぱいになって重要なメールを見逃したり、サーバーがダウンしたりするといった被害が考えられる。はたして、こういう行為はどんな罪に問われるのか。川添圭弁護士に聞いた。
「本件では、短期間に合計253万通という大量のメールが送信されたことにより、メール受信者が迷惑メールの受信に時間がかかる、本来の業務上のメールとの仕分けに時間がかかるといった被害が出ています。
送られたメールの数やその期間によって判断されることになりますが、メールが送信された者との関係では、威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性があります」
川添弁護士はこう説明する。これは、迷惑メールを大量に送りつけたことについての罪だ。さらに、他のウェブサイトの「確認メール」を悪用したことについては、別の犯罪が成立する可能性があるという。
「マスコミ報道によれば、本件は攻撃用のプログラムを利用して、ウェブサイトの問い合わせフォームへ自動で書き込んだり、メーリングリストの申込みフォームへメールアドレスを入力するという手法により、大量のメールを送信させています。
これは、人の業務に使用する電子計算機に不正の指令を与える等の方法により、本来の使用目的に反する動作をさせたと評価できるでしょう。
よって、ウェブサイトの管理者との関係では、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2第1項)または、その未遂罪(同条第2項)が成立する可能性があると考えます」
このように川添弁護士は述べる。
それぞれの犯罪に対する刑罰は、威力業務妨害罪が「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、電子計算機損壊等業務妨害罪が「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」とされている。このようなネットを使った妨害行為は、ソフトを使えば簡単にできてしまうわけだが、れっきとした犯罪である点には注意が必要だろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
川添 圭(かわぞえ・けい)弁護士
大阪弁護士会所属。離婚・相続などの家事事件、多重債務案件、不動産関連訴訟その他一般民事事件のほか、ソフトウェア法務を中心とするIT関連事件やインターネット関連トラブル、消費者被害事件にも積極的に取り組む。
事務所名:川添法律事務所