2013年12月14日 17:30 弁護士ドットコム
「できれば、子どもがほしい」。世の中の多くの夫婦が望むことだが、夫婦そろって同じ気持ちとは限らない。なかには「相手は子供をほしがっているけれど、私はほしくない」という人もいるだろう。
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子どもをつくるかどうか夫婦の間で合意できるのが理想だが、相手が子どもをほしがっているのに、「自分はほしくない」とはっきり伝えるのも、気がとがめるものだ。ついつい、言い出せずにいることもあるかもしれない。
ネットの相談サイトにも、妻がこっそりピルを飲んでいたことに夫が気づき、トラブルや離婚沙汰になったという報告がある。では、もし離婚をめぐる裁判になったとき、子どもをほしがる夫に黙って、妻がピルを飲むことは「離婚原因」として認められるのだろうか。離婚問題にくわしい堀井亜生弁護士に聞いた。
「裁判上認められる『離婚原因』の一つとして、『婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)というものがあります」
堀井弁護士は、このように民法の条文を紹介する。
「これは、夫婦の婚姻生活が破綻した場合、つまり、やり直しがきかない程度の状況のことを指します」
では、子どもをほしがる夫に黙って、妻がピルを飲むことは、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるのだろうか。
「現在の日本では、社会通念上、婚姻生活の当事者が『子供を持たない』という特段の合意をしていない限り、『子どもを持つこと』が暗黙の了解であり、婚姻関係を継続する重要な前提と考えられます。したがって、妻が夫の了承なくピルを飲むことは、婚姻生活を破綻させかねない行為といえます」
このように説明しながら、堀井弁護士は次のように続ける。
「しかし、妻がピルを飲んでいる事実について、夫が知った後に、妻が飲むことをやめた場合には離婚原因にはならないでしょう。
反対に、夫が、妻に辞めるように告げたにもかかわらず、それでも妻が辞めない場合や、すでに妊娠ができない年齢になるまで、夫に隠してピルを飲み続けた場合には、離婚原因となると考えられます」
夫婦関係を円満に保つためには、重大なことについて隠し事をしないことが大切だ。もし「子どもはほしくない」と思っているのならば、そのことを相手に打ち明けて、理解してもらうようにすべきなのだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
堀井 亜生(ほりい・あおい)弁護士
第一東京弁護士会所属 「ホンマでっかTV!?」「とくダネ!」「やじうまテレビ!」「ノンストップ!」などメディアに多数出演。著書に「フラクタル法律事務所の離婚カウンセリング~答えが出るノート~」がある。
事務所名:弁護士法人フラクタル法律事務所
事務所URL:http://www.fractal-law.com/