2013年12月14日 15:30 弁護士ドットコム
会社に出社せず自宅で仕事をするテレワーク(在宅勤務)を導入する動きが広がっているという。インターネットの高速化や無線接続の環境が整い、テレワークが行いやすくなっていることに加え、安倍政権がIT戦略の一環として、テレワークの推進に意欲的な姿勢を見せていることも追い風となっている。
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安倍内閣は今年6月に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」のなかで、雇用形態の多様化とワーク・ライフ・バランスの実現のために、テレワークを社会全体に普及させる施策を進めるとしている。2020年には、テレワークの導入企業数を2012年度の3倍に増やし、週1日以上は在宅で働く「雇用型在宅型テレワーカー」を全労働者の10%以上にする目標を掲げている。
もし自分の勤めている会社がテレワークを導入したら、子育て中の人や時間・場所にとらわれない働き方をしたい人にとっては朗報だろう。だが、自由に働ける分だけ給与がカットされたり、残業代がつかなかったりするのではないかという心配もある。はたしてテレワークには、労働法がどのように適用されるのか。労働問題にくわしい鈴木謙吾弁護士に聞いた。
「まず、テレワークの定義が定まっているわけではないので、いくつかのケースに場合分けして考える必要があります」
このように鈴木弁護士は切り出した。
「たとえば、『週4日は通常通りに出社したうえで、週1日のみ在宅で働く』というケースを想定すれば、一般的な労働関連の法律が適用されるでしょう。
自宅できちんと働いているかどうかをどのようにチェックするかという問題はありますが、自宅でも会社に出社しているときと同じように仕事をする前提ですので、それほど大きな問題にはならないでしょう」
では、テレワークの比重が大きい場合はどうだろうか。
「上の例とは逆に、『ほとんど出社することなく、在宅のテレワークのみがメイン』という働き方だとすると、純粋な労働契約とは評価されにくい状況と言えると思います。
個人事業主と会社が契約している状況に極めて親和性がありますので、どちらかと言えば、労働者というよりも、請負や委託契約に近い状態になると考えられます」
つまり、テレワークが中心となると、雇用契約とはいえなくなってくる可能性もあるというわけだ。
「上記2つの典型的なパターンの『中間』にあたる契約形態においては、その実態に沿って、それぞれ評価・判断されることになりましょう」
鈴木弁護士はこのように述べたうえで、テレワークが抱える問題について、次のように指摘する。
「テレワークを含む労働は、雇用と請負・委託の中間的な契約形態になりやすく、実態から乖離した偽装請負等につながりやすいといえます。ですので、その点について、企業側はもちろん、そのような形態で働こうと考えている個人も十分に注意して、働き方を決めていくことが重要と言えます」
テレワークの普及によって、働き方が多様化するのは歓迎すべきことだろうが、労働者の権利がしっかり守られるかどうか、今後の動向を注視していく必要がありそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
鈴木 謙吾(すずき・けんご)弁護士
慶應義塾大学法科大学院・非常勤教員。東京弁護士会所属
鈴木謙吾法律事務所 代表弁護士。
事務所名:鈴木謙吾法律事務所
事務所URL:http://www.kengosuzuki.com