2013年12月13日 17:20 弁護士ドットコム
「何なんだお前、この写真は!」。彼氏が突然、私の部屋に怒鳴り込んできた。手に持っているスマートフォンには、自分と男友達の映った写真が表示されている……。どうやら、浮気と勘違いされてしまったらしい。
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実際は大勢の飲み会で撮影された写真なのだが、二人きりで笑顔を見せているので、「いい雰囲気」に見えなくもない。そんな写真を誰かがフェイスブックに投稿し、たまたま彼氏が見つけたのだ。
SNSやスマホの普及で、プライベート写真をネットに公開するハードルは、技術的にも心理的にも、大きく下がった。だが、そうした写真が、要らぬ誤解を与えるリスクもある。もし、誰かが勝手に投稿した写真が原因で、彼氏に浮気を疑われて「破局」してしまった場合、写真を投稿した人に慰謝料を求めることはできるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
「投稿した人が何の気なしにその写真をアップしたという場合、アップした人に対する慰謝料の請求はまず認められないでしょう」
秋山弁護士はまず、このように指摘する。なぜだろうか。
「その二人で映っている写真をアップすることで、『女性の恋人が浮気を疑う』ということが予見できたとは言い難いからです。
さらに通常なら、もし浮気を疑われても、事実無根だということを女性本人が説明すれば、恋人も納得するはずです。
したがって、投稿した人に、不法行為(民法709条)の成立に必要な『過失』は認められないと思います」
たしかに、そういった状況であれば、関係者に事情を説明してもらうなど、誤解を解消する方法はいくつもある。
それでは一方、投稿した人が、実は2人の仲を裂こうとしていた、という場合ならどうだろうか。
「もし、投稿した人が『女性と彼氏の仲にトラブルを生じさせよう』と意図して、あえて彼氏に疑念を持たせるような写真を撮影し、アップしたとなると、話は変わってきます。
万が一、その意図どおりに、女性と彼氏の仲にトラブルが生じ、彼氏が女性に別れを求めたという場合、女性に対する故意の不法行為が成立することはあり得るでしょう」
秋山弁護士はこのように述べつつも、「ただし、そのようなことはレアケースだと思います。また、『故意』についての立証も難しいでしょう」と、指摘していた。
結局のところ、今回のようなケースでは、写真投稿者の法的責任を問うことは相当難しいようだ。誰もがカメラを持ち歩く昨今、SNSに投稿された写真程度では揺るがない人間関係を築くことが、以前よりも重要になってきていると言えるのかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
2001年に弁護士登録。所属事務所は現在弁護士6名で、交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債務整理、契約紛争、離婚・相続、不動産関連、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:山崎・秋山法律事務所
事務所URL:http://www.yamaaki-law-office.com/