2013年12月08日 10:30 弁護士ドットコム
最近は職場の分煙化が進み、昔に比べると、タバコを吸わない人が「受動喫煙」に悩まされることは少なくなってきている。一方で、まだまだ企業に残っている文化がある。「タバコ休憩」というものだ。
喫煙者が「ちょっとタバコ吸ってきます」と10分ほど席を離れ、屋外や喫煙ルームにタバコを吸いに行く。間隔はだいたい1~2時間おき、といったところだろうか。喫煙者が多い職場だと、常に誰かが喫煙ルームでタバコを吸っている、なんてこともあるかもしれない。
たしかに、途中で気分転換をはかることも大切だ。吸わないと落ち着かないという人もいるだろう。だが一方で、非喫煙者からは「休憩時間でもないのにタバコを吸って休むのは不公平だ」といった声も挙がっている。
こうした「タバコ休憩」は、従業員の権利として認められて然るべきなのだろうか。逆に、会社側は従業員の「タバコ休憩」を強制的にやめさせることができるのだろうか。労働問題にくわしい緒方剛弁護士に聞いた。
「従業員に喫煙をする権利があるかという点ですが、『喫煙の自由』は憲法13条の保障する人権に含まれるものの、必要性と合理性がある場合には制約することができる(最高裁昭和45年9月16日判決)、と考えられます」
このように緒方弁護士は、最高裁の判例にもとづいて説明する。
「また、会社には、労働の内容や遂行方法、場所などに関する労務指揮権がありますので、就業時間内にどのように仕事をしてもらうかを決めることができます。このため、労働者側に一定の権利があるとしても、これを合理的な範囲内で制約することは許されるのです」
では、「タバコを吸う権利」についてはどうだろうか?
「会社は、従業員の『タバコ休憩』を強制的にやめさせることができると考えられます」
緒方弁護士はこう述べつつ、その理由について、次のように説明する。
「喫煙目的で持ち場を離れることをやめさせることは業務上の必要性もありますし、(休憩時間を除く)就業時間内に限定すれば、合理性のある範囲内だといえるからです」
どうやら、会社が「就業時間中に持ち場を離れて、タバコを吸ってはいけない」と指示すれば、従業員はそれに従わざるをえないようだ。「ただし」と言いつつ、緒方弁護士はこう付け加えていた。
「従業員との摩擦を避けるために、禁煙支援なども同時に行っていくことが望ましいでしょう」
愛煙家からは「会社にお願いしたいのは、喫煙支援のほうだよ」というボヤキが聞こえてきそうだが、禁煙の流れは強まる一方なのが現実だ。もし会社が「禁煙支援」をしてくれるのならば、それに乗ってみるのもいいかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
緒方 剛(おがた・つよし)弁護士
福岡県弁護士会・公害環境委員会 副委員長、九州弁護士会連合会公害環境に関する連絡協議会 委員
事務所名:ひびき法律事務所
事務所URL:http://kitakyushu-hibiki-law-office.com/