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大学入試の「過去問」 自分のサイトに無断で掲載したら「著作権侵害」になる?

2013年12月05日 12:30  弁護士ドットコム

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冬に入り、大学入試の受験勉強もいよいよ大詰めを迎える。この時期にがぜん活躍するのが「過去問集」だ。自分の志望校で過去数年間に出題された「本物」の入試問題が収録されているため、出題傾向もつかめるし、実戦感覚も磨けるしで、仕上げにはもってこいの教材といえる。


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「過去問集」は学習教材として需要が高く、書店の受験コーナーの定番商品といってよい。もし、インターネット上でも、分かりやすい解説文や講義風の動画などがついたサイトを作り、公開すれば、多くの人が利用するに違いない。



そうなると気になるのが、著作権の問題だ。はたして過去問は、誰でもサイトに掲載して良いものなのだろうか。たとえば、「数学は良いけど、国語はダメ」といったように、教科で違うということもあり得るのだろうか。著作権にくわしい井奈波朋子弁護士に聞いた。



●過去問それ自体が「著作物」


「大学入試の過去問には、その過去問自体に、問題を作成した大学の著作権が生じると考えられます。



したがって、過去問の著作権者である大学の使用許諾なく、実際の過去問を再現した上で解説サイトを作成し、アップロードすることは、大学の複製権・送信可能化権を侵害することになります」



つまり、過去問そのものが著作物として保護されるようだ。それでは、極端な例だが「4x5=」のような単なる数式でも、著作物となるのだろうか?



「数学の問題における数式そのもの、社会の問題における歴史的事実そのものについては、『思想・感情を創作的に表現したもの』という著作物の定義に該当しないため、著作物性は認められません。



しかし、数式や歴史的事実を用いて作成された問題は、著作者の思想・感情を創作的に表現したものとして、著作物性が認められると考えられます」



少しややこしいが、数式や歴史的事実でも、それを「パーツ」として利用し、作られた問題なら、著作物とみなされるようだ。



●「題材となった文章」の著作権にも注意が必要


もうひとつ気になるのが、有名作家の文章などを読んで回答するタイプの、国語や英語の過去問の扱いだ。



「結論からいうと、そうしたタイプの問題をネットに掲載する場合、大学の許可だけでなく、題材となった元の文章を書いた人の許可も必要です。



過去問の再現に伴って、過去問に使用された『題材』も無許可で再現すれば、過去問を作成した大学の著作権だけでなく、当該題材の著作権にも抵触することになります」



 井奈波弁護士はこのように指摘し、注意をよびかけていた。



もし受験対策のサイトをつくりたいなら、少々ハードルが高いが許諾をとるか、学習塾や予備校なりに独自の問題を作成して提供するほうがよさそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
井奈波 朋子(いなば・ともこ)弁護士
出版・美術・音楽・ソフトウェアの分野をはじめとする著作権問題、商標権、ITなどの知的財産権や労働問題などの企業法務を中心に取り扱い、フランス法の調査、翻訳も得意としています。

事務所名:聖法律事務所
事務所URL:http://shou-law.com/