2013年12月04日 18:10 弁護士ドットコム
植物採集や昆虫採集など、自然の物を野山で採集する趣味がある。そんな採集の一つである「鉱物採集」を趣味にしている人が逮捕されてしまう事件があった。
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山梨県甲府市内の市有林で「天然水晶」を盗掘したとして、市内在住の会社員が10月下旬に逮捕されたのだ。容疑は森林法の「森林窃盗」の罪だという。山梨日日新聞によると、会社員は「水晶などの鉱物の収集が趣味だった」と話しているという。
「森林窃盗」という罪名は聞き慣れないが、どういう罪なのだろうか。また鉱物や植物、昆虫などを採集する際に気を付けなければならないことは何なのか。刑事事件にくわしい星野学弁護士に聞いた。
「私もはじめて弁護を依頼されたときには、『森林法違反!?』『いったい何をしたんだ?』とびっくりしました。しかし実は、山林がある地方ではめずらしい犯罪ではありません」
星野弁護士はこう語る。聞き慣れない法律だが、「森林法」とはいったいどんな法律なのだろうか。
「森林法は、森林の保護を目的とする法律です。そのため、その目的を阻害する森林の産物の窃盗や、森林を焼く行為は、森林法違反として罰金・懲役刑が定められています。
また、『森林の産物』が何かは、特に限定されていません。したがって、森林にある山菜、草花、昆虫、岩などを無断で採取する行為は森林法違反です。
実際に検挙された例を見ても、無断で採取したのが、天然水晶だったり、植木として販売するための樹木だったり、食用の竹の子だったり、観賞用の溶岩だったりと、さまざまです」
岩や山菜採りだけでなく、昆虫採集までもダメとは意外と厳しい感じもする。子どもが昆虫採集をして逮捕!なんていうことは、さすがにないだろうが……。
「実際に検挙されるかどうかの判断は難しいのですが、キーワードでいえば『営利目的』『長期』『継続的』『大規模』『自然破壊』などとなるでしょうか?
もっとも、野草の採取であっても、地元で保護の対象となっていれば逮捕される可能性があります。したがって、安易に自然のものを持ち帰らず、自然のものは自然の中で楽しむという余裕のある気持ちを持ったほうが良いと思います」
星野弁護士はこのように注意を促していた。
草木の匂い、動物の気配、吹き下ろしてくる風や腐葉土の感触など、そこに行かなければ味わえない魅力が山にはある。自然の一部を持ち帰り、自分だけのものにしようとするのは、無粋な人の欲望なのかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
星野 学(ほしの・まなぶ)弁護士
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から一年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。ほかに、行政機関の各種委員も歴任している。
事務所名:つくば総合法律事務所
事務所URL:http://www.tsukuba-law.com