トップへ

「飲むだけで簡単に痩せられる」はNG 「健康食品」広告のガイドラインをどうみる?

2013年12月01日 14:20  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「医者に行かなくとも動脈硬化を改善!!」「飲むだけで、簡単に痩せられる!!」。健康食品の広告には、誇大ともいえる宣伝文句が使われていることも多いが、そのような表示に待ったをかけるガイドラインの案が、消費者庁から発表された。


【関連記事:外回り営業マンの「サボり」はどこまで許される? クビになるのはどんなときか】



ガイドライン案では、どのような場合に景品表示法や健康増進法に違反するのかについて、さまざまな具体例を挙げ、指針を示している。利用者に実際の効能よりも優良であると誤認させるような表記や、効果を裏付ける合理的な根拠がないものなどが違反になるという。



今回のガイドラインについて、消費者庁はパブリックコメントを募集し、12月中に取りまとめをするという。新たに作成されるガイドラインによって、健康食品の表記は大きく影響を受けるのだろうか。食品安全・表示問題にくわしい石川直基弁護士に聞いた。



●健康食品の広告にガイドラインが与える影響は限定的


「率直に言って、今回のガイドラインが策定されても、健康食品の広告が改善される効果は少ないと思います」



石川弁護士はため息をつく。いったい、どうしてそう言えるのだろうか。



「景品表示法は、実際のものよりも著しく優良であるとする広告を規制し、健康増進法は、著しく事実に相違する広告、著しく人を誤認させる広告を規制しています。



しかし、違反しても、まずは主務大臣から改善するよう指示・勧告を受けるだけで、その指示・勧告に従えば、後はおとがめがありません」



違反してもおとがめなしとは、どういう意味だろうか?



「それは、事業者が刑事罰を受けるのは、主務大臣の指示・勧告に従わず、指示・勧告に係る措置命令を受けて、さらにその命令に反したとき、というルールだからです。実際に事業者が、刑事罰を受けることはほとんどありません」



●法律そのものの広告規制が不十分


それでも違反を続ければ、最終的には刑事罰を受けることになるわけだが、そのことは抑止力にならないのだろうか?



「事業者としては、主務大臣から指示・勧告がされるまで広告を続けて、その間は利益を上げることができます。



違反しても、その利益をはき出すルールはありませんから、結果的にやり得を許すことになっています。つまり、法律自体の広告規制が不十分なのです」



●ルールの周知を徹底できるかどうかも課題


「もう一つの問題は、ガイドラインを策定しても、事業者への周知徹底が不十分で、無視されてしまうかもしれない点です」



なぜ、そんな心配をするのだろうか。



「たとえば今年、『牛脂注入加工肉』を『ステーキ』とメニューに表示することが問題となりました。



しかし実は、このような表示をしてはいけないことは、以前から消費者庁のホームページに掲載されていたことなのです。



せっかく作ったルールが、結果的に、多くの事業者に気づかれず無視されていました。健康食品ガイドラインも、このままでは同じような結果になる可能性があります」



石川弁護士はこのように懸念を表明していた。



たしかに、せっかくガイドラインを作っても、事業者にそれを守ろうという意識がなかったり、その内容が事業者に伝わっていなかったりすれば効果は薄い。ガイドラインの作成と同時並行で、ルールの実効性をどうやって高めていくかという議論も、煮詰めていかなければならないといえそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
石川 直基(いしかわ・なおき)弁護士
平成10年弁護士登録。民事・商事・家事・行政・刑事各分野を取り扱うほか、雪印乳業食中毒事件、茶のしずく石鹸事件などの消費者製品被害弁護団に参加し、平成22年6月からは日弁連消費者問題対策委員会副委員長として食品安全・表示問題に取り組んでいる。

事務所名:米田総合法律事務所