トップへ

これは「パワハラ」ではないのか? フェイスブックで「部下のミス」を晒す上司

2013年11月28日 16:10  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「打ち合わせに遅れてきた部下の言い訳がダメすぎ。きっちりシメてやりましたよ!」。部下のミスをフェイスブックで“晒す”上司がいるのだという。上司は面白いネタの一つとして投稿しているようだが、こんな調子で晒される部下にとっては気持ちがいいものではない。


【関連記事:外回り営業マンの「サボり」はどこまで許される? クビになるのはどんなときか】



たとえ名前が出ていなくても、そこでネタにされているのが自分であることはわかる。自分の失敗談について「ひどい後輩www」「笑えるw」といったコメントがつけば、心が傷つくのだ。ネットメディア「ITmediaニュース」には、「全員に嘲笑されているような気がしてつらかった」というある女性の声が紹介されていた。



このような部下の失敗をネタにした投稿は、フェイスブック上の「いじめ」といえないか。不特定多数の人が見ている「公然の場」で部下のミスをあげつらうのは、パワハラにあたり、違法とはいえないのだろうか。SNSをめぐる法律問題にくわしい森本明宏弁護士に聞いた。



●パワハラとはどんな行為をいうのか?


「『パワハラ』とは、同じ職場で働く人に対して、(1)職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、(2)業務の適正な範囲を超えて、(3)精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為、をいいます」



パワハラの定義について、森本弁護士はこう説明する。続けて、今回のようなケースが、パワハラにあたるのかを検討してもらおう。



「まず、フェイスブックという不特定多数の人間が閲覧しうる場において、上司が部下のミスを面白おかしく“晒す”行為は、(1)上司の部下に対する『職場内の優位性を背景にするもの』といえます」



まず、1つめの要件はクリアするようだ。



「部下にミスがあった場合に、上司がそのミスを指摘して、業務上必要な範囲で部下を指導することは許されます。しかし、ネット上で“晒す”行為は適正な指導とはいえず、(2)『業務の適正な範囲を超えるもの』といえるでしょう」



2つめの要件もクリア。指導には、それなりの作法があるということだろう。



「また、失敗を“晒された”部下は、不特定多数の人間の前で『嘲笑された』『叱責された』と感じ、精神的な苦痛を受けるでしょう。これは部下に対して(3)『精神的苦痛を与える行為』といえます。



その投稿に同調するコメントが付いたり、シェアされるなどした場合には、その投稿が拡散されることになりますから、精神的苦痛はより深刻になります」



失敗をSNSでネタにされて、嬉しいわけがない。森本弁護士は「上司が今回のような投稿をすることは『パワハラ』にあたり、違法といえるでしょう」と結論づけたうえで、次のようなアドバイスを送っていた。



「フェイスブックは実名登録が原則のSNSです。たとえ名指しでなくても、その投稿が誰に関する投稿であるのか、投稿者の勤務先、友達つながりなどの情報から容易に推測できる場合があることを、決して忘れてはいけません」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
森本 明宏(もりもと・あきひろ)弁護士
森本 明宏(もりもと・あきひろ)弁護士
愛媛弁護士会所属(平成14年弁護士登録)。平成22年度・23年度、愛媛弁護士会副会長。愛媛地方最低賃金審議会公益委員・日本スポーツ法学会会員。http://www.facebook.com/lawyer.morimoto
事務所名:酒井・森本・高橋法律事務所
事務所URL:http://pro.mbp-ehime.com/law-morimoto