2013年11月28日 14:21 弁護士ドットコム
「退職後2年間は同業他社に転職しないこと、また同業で起業しないこと」。こんな誓約書にサインを求められたらどうしたらいい? そんな話がツイッターで話題になっている。「違法な契約だ」という意見がある一方で、「技術や知識が他社に流れる。守秘義務として当然じゃね?」と誓約書を肯定する声もある。
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企業にとっては、何年もかけて育てた優秀な人材がライバル会社に引き抜かれたり、そのノウハウをもって独立されるのを避けたいということだろう。そのため、退職後の「競業禁止」を盛り込んだ契約を従業員との間で取り交わす会社が増えているという。違反すれば、退職金を支給しないなどのペナルティが定められていることもあるそうだ。
だが、働く側にとって「競業禁止規定」はあまりに制約が大きい。同じ業種に転職できないとすれば、実質的に転職の機会が奪われているようなものではないか。会社からこのような転職禁止の誓約書にサインを求められた場合、どのように対応すればいいのだろうか。また、サインしてしまった場合、この契約はどこまで有効となるのだろうか。企業法務にくわしい林浩靖弁護士に聞いた。
「最大のポイントは、『競業禁止』をする合理的な必要性があるのかという点です。合理的な必要性があれば、誓約書は有効ですが、そうでなければ無効です」
誓約書が有効だと認められる場合も、認められない場合もあり、一概には言えないようだ。合理的どうかの判断は、どのように下されるのだろうか。
「総合的な判断ですが、(1)誓約書を書いた人の退職前の地位、(2)競業が禁止される業務・期間・地域の範囲、(3)代償処置の有無、などがポイントです」
何か、「目安」のようなものは、あるのだろうか?
「大きな傾向としては、禁止期間が長いものは無効とされやすく、特に5年以上の長期のものは認められない可能性が高いといえます。一方で、6カ月程度のものであれば、有効とされることが多いでしょう。
ただし、役員など営業秘密に係わるような者については、1~2年程度のものでも有効とされる可能性が高いと言えます」
林弁護士はこのように解説したうえで、次のようなアドバイスを送っていた。
「ただし最終的には、個別の事案による面があります。もしサインを求められたり、トラブルになった場合には、早めに弁護士に相談されることをお薦めします」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
林 浩靖(はやし・ひろやす)弁護士
東京弁護士会所属。企業法務を中心に取り扱う事務所、金融商品被害を中心に取り扱う事務所を経て、事務所を開設。中小企業の企業法務、金融商品被害などを中心に業務を行い、原発被災者弁護団団員として、福島第一原発被災者の問題にも携わっている。
事務所名:林浩靖法律事務所
事務所URL:http://www.hayashihiroyasu-lawoffice.jp/