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「ノミ行為」の「ノミ」ってどんな意味? 英国では合法、日本では違法なのはなぜ?

2013年11月26日 16:51  弁護士ドットコム

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東京・歌舞伎町で「ノミ行為」をしていた店が、警察に摘発された。店の経営者や客ら10人が11月上旬、競馬法違反などの疑いで逮捕されたのだ。報道によると、この店では、競馬や競輪、競艇の中継を見ながら、1口100円で賭けることができたという。


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ここで出てきた「ノミ行為」という言葉。報道でときどき見かけるが、くわしく解説されることがないから、どんな意味なのかよく分からない人も多いのではないか。前後の流れから、JRA(日本中央競馬会)など公式のギャンブル主催者ではない「非正規の胴元」を営むことだと推測はできるが・・・。



そもそも「ノミ行為」の「ノミ」とはいったい何のことで、法律にはどのように規定されているのだろう。また、「非正規の胴元」ということであれば、海外には「ブックメーカー」がたくさんあるが、どうして海外では許されて、日本では禁止されているのだろうか。ギャンブルに関する法律にくわしい津田岳宏弁護士に聞いた。



●もともと証券業界で使われていた俗語に由来


「『ノミ行為』の名前の由来は、証券業界の俗語である『呑み行為』です」



このように津田弁護士は切り出した。



「ギャンブルにおける『ノミ行為』とは、私設の胴元(投票所)を営むことで、それをする業者が『ノミ屋』です。ノミ屋は客からの申込金を受け、客の予想が的中すれば払戻金を交付しますが、外れた場合は申込金を利益として呑み込みます」



要は、JRAなど本来の胴元を通さず、賭けを丸呑みするのがノミ屋ということか。公営のギャンブルなどもあるのに、私設の胴元に出番があるのはなぜなのだろうか?



「なぜ正規の胴元ではなく、ノミ屋を利用する人がいるかというと、それは控除率(テラ銭・遊戯料)が安いからです。



たとえば、中央競馬の控除率は25%ですが、ノミ屋の控除率はそれより低く設定されています。具体的には、客が外れた場合の負け分を割引する(俗に『オチ』などと呼ばれる)方法などが採られているようです」



つまり、ノミ屋のウリは、胴元の取り分が少ない、ということらしい。裏返すと客の取り分が増えるわけだから、客には魅力的に映るのだろう。



「ノミ行為は、競馬法・自転車競技法(競輪)・モーターボート競走法(競艇)などに処罰規定のある違法行為です。胴元だけでなく、客も処罰されます。胴元の法定刑は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金であり、重罰です」



●イギリスのブックメーカーは合法のノミ屋


一方、こうした行為が合法化されている国もあるようだ。



「たとえばイギリスには、合法の私設胴元であるブックメーカーが多数存在し、あらゆること、たとえば『日本の次の総理大臣は誰か』『産まれてくるロイヤルベイビーは男か女か』などが賭けの対象となっています。



イギリスでは、約50年前にギャンブルについての国家的な調査をおこなった結果、『ギャンブルは大きな害になるものではなく、国家は必要以上に国民の楽しみを阻害してはならない』という結論に至り、1960年にいわゆる『ギャンブル解禁法』が施行され、私設のブックメーカーも合法化されたのです」



日本ではどうだろうか?



「日本の裁判でも、ノミ行為を処罰する法律は憲法違反だ、という主張がされたことはありました。



しかし、『個人のする賭博は大きな害があるが、公共機関の厳重かつ公正な監視の下での賭博は比較的害が少ない』として、その主張は退けられました」



かたや重罪、かたや産業。何を許容し、何を禁止するのか、ギャンブル規制は、その国の文化や歴史、国民の意識の違いがストレートに反映されやすい分野なのかもしれない。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
津田 岳宏(つだ・たかひろ)弁護士
京都弁護士会。京都大学経済学部卒業。著書に「弁護士には聞きにくいー知って助かる!法律相談」「賭けマージャンはいくらから捕まるのか」など
事務所名:松枝法律事務所