2013年11月25日 14:31 弁護士ドットコム
「ブラック企業」といえば、過酷な労働環境で長時間にわたって従業員を働かせる企業というイメージが強いが、「辞めたいのに辞めさせてくれない」企業も、「ブラック」と呼んでいいだろう。働くことに関する様々な相談に応じているNPO法人労働相談センターには、「会社が辞めさせてくれない」という悩みが数多く寄せられている。
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同センターのウェブサイトに掲載された事例は、次のようなものだ。
「介護施設。退職届を提出した。上司は了解したのに、施設長が『就業規則には2ヵ月前に提出となっているので受け取れない』と退職届を戻してきた」
「派遣社員。病院事務勤務。職場環境が辛く、心身ともに壊れてしまい、病院に退職を申しいれているが『病院のイメージも悪くなる。面子が立たない』と辞めさせてくれない」
「派遣。ホテル勤務。仮眠もない過酷な勤務のため、睡眠不足で体重も6キロ減り、フラフラな状態で働いている。仕事で車の運転もやる場合であり、限界なので退職を申し入れたが『人を探すまで待って欲しい』と言われた」
このように「辞めたいのに辞めさせてくれない」会社は少なくないようだが、従業員に「退職の自由」はないのだろうか。もし会社が強引に引き止めてきたら、どうしたらいいのか。労働問題にくわしい高木由美子弁護士に聞いた。
「期間の定めのない雇用契約を結んでいる場合、労働者は基本的に、2週間前に退職届を一方的に出すことで、問題なく退職することができます。会社に引き留める権利はありません。また理由についても特に問われず、たとえば『一身上の都合』でも問題はありません。
ただし、就業規則等に、退職届を出す時期についての規定がある場合は、注意が必要です。たとえば、『3カ月前』と規定されていて、その期間に合理的な理由がある場合には、3カ月前に退職届を出す必要があります」
このように高木弁護士は説明する。では、契約社員など契約期間が決まっている場合はどうだろう。
「最近多い1年契約など、期間の定めのある雇用契約では、原則その期間が終了しなければ退職することができません」
どうやら、無期雇用の場合とは違うようだが、有期雇用の社員が退職したい場合はどうすればいいのか?
「契約期間の終了前に退職するには、体調不良や家庭の事情などの『やむを得ない事情』が必要です。
もし、やむを得ない事情がないのに期間の途中で退職し、それにより会社に損害が発生した場合は、会社はその退職者に損害賠償請求をすることが可能です。十分注意してください。
もっとも、例に挙げられているような過酷な労働環境があったとすれば、期間の定めのある雇用契約の期間終了前であっても、『やむを得ない事情』があるとされる可能性が高いでしょう」
過酷な労働を強いられたうえで「辞めさせてもらえない」というようなケースでは、他にも色々な問題が発生している可能性がありそうだ。就業規則や雇用契約の内容をしっかりと確認したうえで、しかるべき対処を考えたほうがいいだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属弁護士。カリフォルニア州弁護士
事務所名:さつき法律事務所
事務所URL:http://www.satsukilaw.com/