2013年11月25日 11:50 弁護士ドットコム
テレビ番組の録画代行サービスを行っている業者が摘発された。顧客の依頼に応じて、テレビ番組を録画したDVDを販売していた録画代行業の夫婦が、著作権法違反の疑いで逮捕され、11月13日に仙台簡裁に略式起訴されたのだ。
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朝日新聞によると、夫婦は東京都内の自宅にある録画機4台で、顧客から指示された番組をDVDに録画し、4年ほどで4千万~5千万円を売り上げていた。依頼者はインターネットで募っていたという。起訴当日に仙台簡裁から略式命令を受けたが、その内容は各罰金30万円というものだった。
今回の事件は、録画代行業者が見ず知らずの依頼者に代わってテレビ番組をDVDに録画していたというものだったが、もし録画を引き受けたのが依頼者の「友人」だったら、どうだったのだろうか。依頼者に頼まれた「友人」が番組を録画し、後日、DVDで手渡した場合も、著作権侵害になってしまうのだろうか。著作権法にくわしい雪丸真吾弁護士に聞いた。
「結論から述べると、DVDへの録画をしたのが『友人』であれば、私的複製(著作権法第30条1項)となり、著作権侵害にはならないと判断します」
どうしてそう言えるのだろうか。
「著作物は、『個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する』場合であれば、私的複製が認められています。
つまり、本件で問題となるのは、DVDへの録画の依頼人と依頼された友人の間に『家庭内その他これに準ずる限られた範囲内』と言えるだけの関係があるか、という点になります」
ひとくちに友人といっても、その定義だとけっこうハードルが高そうにも思えるが……。
「この要件については、論者によって理解の仕方に多少幅がありますが、相手方との間に家族に準ずる程度の親密かつ閉鎖的な関係があることが必要と考えられています。
今回のケースは、自分が好きなテレビ番組を明らかにするという結構恥ずかしいことをして、DVDへの録画という面倒事を頼める間柄ですから、家族に準ずる程度の親密かつ閉鎖的な関係のある友人と言って良いように思います」
言われてみれば、そんな作業を気楽に頼めるのは、かなり親しい相手だけだろう。それぐらい限定された範囲内であれば、著作権法上認められる「私的複製」になるということだ。
さて、少し話はずれるが、こうした事件でよく話題になる「複製の主体が誰なのか」という問題は、友人に頼んだケースだと発生しないのだろうか。雪丸弁護士は次のように解説してくれた。
「『実際に複製行為を担当した者ではなく、依頼した者が複製の主体ではないか』という議論は、平成23年1月20日最高裁判決(ロクラクⅡ事件)や平成25年9月30日東京地裁判決(自炊代行事件)で問題とされ、最近注目を浴びています。
しかし、今回はそうした難しい議論に立ち入る必要はありません。単純に『録画を依頼された友人』が複製の主体だと考えれば良いと思います」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
雪丸 真吾(ゆきまる・しんご)弁護士
著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師
事務所名:虎ノ門総合法律事務所
事務所URL:http://www.translan.com/