2013年11月20日 12:21 弁護士ドットコム
熊本県の「くまもん」や船橋市の「ふなっしー」(非公認)など、今やすっかり地域の顔になりつつある全国の「ゆるキャラ」たち。11月24日には今年の「ゆるキャラグランプリ」の投票結果が発表される予定で、この日を心待ちにしているファンの人も多いだろう。
【関連記事:ファミレスの客待ち名簿に「古畑任三郎」や「江戸川コナン」と書いたら犯罪か?】
実はこの「ゆるキャラ」という言葉は、漫画家のみうらじゅんさんが発案したものとされる。みうらさんは10年ほど前から、『ゆるキャラ大図鑑』などの著書を通じて「ゆるキャラ」の普及につとめてきた。それだけでなく、「ゆるキャラ」という名称自体が、みうらさんの事務所によって商標登録されているのだ。
ということは、自治体や企業が独自のキャラクターを作った際、勝手に「●●のゆるキャラ」と名乗ることは許されないのだろうか。商標権にくわしい岩原義則弁護士に聞いた。
「簡単にいうと、商標とは、そのマークや名前をみれば、その会社などが提供する商品などがイメージされるものです。これを商標の『自他商品役務識別機能、出所表示機能』といいます。
商標が有効に登録されていれば、権利者は、他の者が類似商標を使ったときに、排除や損害賠償を求めることができます」
つまり、登録された商標と同一・類似の商標は原則、自由には使えないということだ。みうらじゅんさんの「ゆるキャラ」という商標についてはどうだろうか。
「調べると、『ゆるキャラ』の権利者は、かなり幅広い範囲で商標登録をしているようです。それでも、登録された範囲(指定商品・指定役務)で類似とされなければ、商標を利用することができます」
逆に言うと、登録されている範囲内では、同一・類似の商標は、自由に利用できないということだ。
ただし有効に登録された商標でも、もしそれが「普通名称化した」と判断されれば、自由に使えるようになるという。
「『商標の普通名称化』とは、ある商標が有名になって、その商標に接した需要者が、ある特定の者のマークと思わず、ある商品の一般名称と思ってしまうというものです。
今回の『ゆるキャラ』も、『商標の普通名称化』が起きたと判断されれば、権利を持っている人が商標権を行使することができなくなり、利用が可能となります」
普通名称化の例としては、ブドウの「巨峰」や、料理の「うどんすき」などがあるようだ。「ゆるキャラ」という言葉も、すっかり定着したかに思えるが、商標の普通名称化は起きていないのだろうか?
「今回の『ゆるキャラ』なる商標は、同じ権利者によって、41類で2012年4月に出願され、2013年8月に登録されています」
みうらさんが、従来とは異なる範囲で昨年出願した「ゆるキャラ」という商標が、今年新規登録された。それは、どういった意味を持つのだろうか? 岩原弁護士は次のように指摘していた。
「審査段階で『商標の普通名称化』が認定されれば、商標登録できません。したがって、少なくとも特許庁での登録審査段階では、『ゆるキャラは普通名称化されていない』と判断しているといえるでしょうか」
そうなると、現在「ゆるキャラ」という言葉を使う際には、登録された商標にきっちりと気を配る必要があると言えそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
岩原 義則(いわはら・よしのり)弁護士
弁護士・弁理士。大阪弁護士会・知的財産委員会副委員長
事務所名:溝上法律特許事務所
事務所URL:http://www.mizogami.gr.jp/