2013年11月18日 19:51 弁護士ドットコム
イベント等のチケットを転売目的で購入し、ネットオークションなどで値段を釣り上げて売る。こうした行為は「ネットダフ屋」行為とも呼ばれ、規制すべきだという声があがっている。
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ネットオークションですぐに落札できる価格を「即決価格」というが、有名アーティストのライブチケットなどは、定価の3~4倍という即決価格がついていることが少なくない。注目度が高いと10倍を超える例もあるようだ。競っている場合でも、定価以上に値が上がる場合が多い。
こうした状況に、「お金持ちしかライブに行けなくなる」「転売目的で大量購入されると、チケットを買えなくなる人が出てくる」といった不満の声があがっているというわけだ。
イベント会場の周辺などで直接チケットを購入・転売する、いわゆる「ダフ屋」行為は、多くの自治体で迷惑防止条例違反となり、規制対象だ。それでは、ネット上で転売がなされるネットダフ屋行為は、これと同様に規制をすることができるのだろうか。西田広一弁護士に解説してもらった。
「本来、自由主義(資本主義)経済のもとでは、何をいくらで売るかは公序良俗に反しない限り原則として自由です。
ネットオークションでは訪問販売のような強引な勧誘も不意打ちもなく、公演会場前で暴力団風の男が『チケットあるよ』と声をかけてくるような迷惑行為もありません。
そういった観点から、ネットオークションにおいてチケット等を転売する行為については、規制すべきではないという考え方もあるでしょう」
西田弁護士はこのように述べたうえで、ネットダフ屋の問題点を次のように指摘する。
「しかし他方で、現状を放置すると、ダフ屋行為で安易に金儲けしようとすることが、一般の人たちの間にも蔓延する可能性があります。
そうなれば、人気のあるチケットについては、一般人が定価で購入できる機会が少なくなってしまうでしょう。結果として、国民がコンサートや演劇等の文化に触れる機会が減少し、文化振興を損なうことになりかねません」
「ネットダフ屋」を取り締まるために、自治体の迷惑防止条例は役に立つのだろうか。
「東京都の迷惑防止条例では、(1)不特定の者に転売する目的で公共の場所において入場券等を購入する行為、(2)転売目的で得た入場券等を公共の場所において不特定の者に売る行為を禁止し、違反行為について6か月以下の懲役と50万円以下の罰金(常習の場合、加重)が科されます。
他の多くの自治体でも同様の規定があります。こうした条例の趣旨は、暴力団の資金源を断つこと、ダフ屋による付きまといや押し売りなどの不良行為を防止することにあるとされています」
「新たな規制目的が出てきたこともあり、実務的には、こうした迷惑防止条例をネットを介したダフ屋行為にも適用するという事例が出てきています。
たとえば、ネットでの転売目的でコンビニでチケットを購入した行為を、条例違反で立件したというケースがありました。
ネットは条例のいう『公共の場所』にはあたらないとされていますので、何とか規制を行うため、若干、拡張解釈をして、コンビニを『公共の場所』に該当するとしたようです」
しかし、チケットがネットで購入された場合など、条例の拡張解釈には限界もありそうだ。西田弁護士は次のように指摘し、チケットを買う側にも高いモラルを保つよう呼びかけていた。
「こういった条例はもともとネット取引を想定して作られたものではありません。今後は、もっと明瞭な形でネットダフ屋を法規制する必要があるでしょう。
また、オークション事業者や興業主がネットダフ屋を排除する種々の工夫をし、市民も利益追求目的で出品されたチケットを落札しないという自覚を持つべきと思われます」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
西田 広一(にしだ・ひろいち)弁護士
1956年、石川県小松市生まれ。95年に弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪を拠点に活動。得意案件は消費者問題や多重債務者問題など。大阪弁護士会消費者保護委員会委員。関西学院大学非常勤講師。最近の興味関心は、読書(主にビジネス書)、クラウドサービスなど。
事務所名:弁護士法人西田広一法律事務所
事務所URL:http://law-nishida.jp