2013年11月15日 18:20 弁護士ドットコム
若い女性の間で「混浴」が密かなブームになっている。露天風呂にカップルで入るのを楽しむ人もいれば、一人で気ままに混浴風呂に入る女性もいるようだ。インターネット上にも、混浴ができる温泉を紹介するサイトや混浴体験をつづったブログがいくつも設けられている。
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だが混浴風呂には、女性たちを困らせる「ワニ」が出没するのだという。といっても、動物のワニではない。女性を目当てにして待ち構えている男性のことだ。脱衣所の近くで女性を待ち伏せしたり、女性が湯船に入ってくると世間話をしながら近づいてくるなど、さまざまな生態のワニがいるそうだ。
混浴ガイドのサイトでは、ワニが出る混浴施設は避けるように呼びかけていたりするが、そもそも、混浴風呂で女性を待ち伏せするワニの行動は、法的にみて問題があるのだろうか。小笠原基也弁護士に聞いた。
「単に混浴風呂に入ってくる女性を待っていたり、話しかけたりする程度では、マナーの問題としてはともかく、法律上違法とされることはないでしょう。
しかし、執拗に声をかけたり、つきまとったり、行動を凝視し続けたりして、通常人でも我慢の限界(受忍限度)を超えるような行為は、不法行為として、損害賠償の対象となる可能性があります。
さらに、女性の体に触れたり、胸元や臀部など隠そうとしている部分をのぞき込む行為は、その態様によっては迷惑防止条例違反として、刑事処罰の対象となる可能性があります」
小笠原弁護士はまず、混浴風呂での待ち伏せ行為が、程度によっては違法とされる可能性を指摘した。ただ、問題はそこにとどまらないようだ。
「たとえ個々の『ワニ』行為が違法とならず、単なるマナー違反だとしても、問題はそれだけでは済まされず、その混浴温泉の存立にかかわる場合があります」
マナー違反では済まされないとは、どういうことだろうか。
「各地の公衆浴場法施行条例によると、原則として、浴室は男女別にすることとされています。混浴が認められるのは、『衛生上及び風紀上支障がない場合』(岩手県、秋田県、長野県など)や家族風呂(青森県など)など、あくまで例外です。
マナー違反行為は、それが元で客同士のケンカに発展するなど、他のトラブルが生じる可能性もあります。もし、『ワニ』行為が多発し、風紀上問題であるとされれば、行政機関の指導により、混浴自体が認められなくなるおそれがあります」
つまり、もし風紀が乱れていると判断され、指導があった場合などは、混浴が認められなくなる可能性もあるということだ。小笠原弁護士は次のように指摘し、こうした行為を自制するよう、注意を促していた。
「混浴は、建物の建設が容易でなかったり、湯の湧出量が限られているような山奥で、医者にかかれなかったり、治療できないような病気や怪我を治すという『湯治』から生まれた文化です。
しかしながら、『ワニ』のようなマナー違反者が続出するようでは、混浴を文化として保存すること自体の是非を考えなければならないかもしれません」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
小笠原 基也(おがさわら・もとや)弁護士
岩手弁護士会・刑事弁護委員会 委員、日本弁護士連合会・刑事法制委員会 委員
事務所名:もりおか法律事務所