2013年11月15日 16:20 弁護士ドットコム
逃げた競走馬とぶつかった軽乗用車が、はずみで別の乗用車と正面衝突し、軽乗用車の運転手が亡くなるという事故が10月下旬に起きた。
【関連記事:テレビでおなじみ「負けたら食事代おごり」のゲーム 「賭博罪」にはならないの?】
報道によると、岐阜県の笠松競馬場で調教されていた2歳の牝馬が暴れ出し、騎手を振り落として脱走した。逃走を知らせるサイレンが鳴ったが、競馬場の門を閉めるのには間に合わなかった。笠松競馬場から競走馬が逃げたのは今年に入って4度目だという。
競走馬の育成には、オーナー(馬主)や調教師、厩務員、騎手など、多くの人がかかわる。はたして、今回のような事故で、その誰が責任を問われるのだろうか。岐阜県に隣接する愛知県で開業し、交通事故の問題にもくわしい堀田崇弁護士に聞いた。
「事故が起こった具体的な状況は不明ですが、公道を運転中に道路脇から突然、馬が飛び出してきたのだとすれば、運転手が衝突を回避することは不可能であったと思われます。
亡くなられた運転手の遺族は、競走馬を管理していた者に対して、この事故による損害賠償を請求できると考えられます」
堀田弁護士はこう話す。それでは、事故の責任は誰にあると言えるのだろうか。
「競走馬を直接管理していたのは調教師になりますが、騎手が競走馬に振り落とされるのはしばしば起こることです。一方、笠松競馬場から脱走することさえなければ今回の事故は起こらなかったわけですから、笠松競馬場を管理する岐阜県地方競馬組合の責任は免れないと思われます。
特に、競走馬の脱走は今年に入ってから4回目ということですので、組合による対策は不十分であったと言わざるを得ないと思われます」
「なお、今回、車と衝突した馬は競走馬であり、馬主の所有物です。競走馬が死亡したことにより馬主は損害を被っていますので、競走馬の管理者に対する損害賠償請求が可能であると考えられます。
これについても、競走馬が笠松競馬場から脱走することさえなければ、競走馬が死亡することはなかったと言えますので、先ほどの話と同様、笠松競馬場の管理者である岐阜県地方競馬組合の責任は免れないと考えられます」
堀田弁護士は競馬場管理者の責任に焦点を当て、このように述べていた。競走馬の脱走をどうやって防いでいくべきなのか、競馬場にはどこまでの対策をする義務があると言えるのか、今後の事故対策に関する議論に注目が集まりそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
堀田 崇(ほった・たかし)弁護士
愛知県弁護士会・名古屋消費者信用問題研究会等所属。
上場会社を含む企業顧問を多く手がけるほか、個人向けには交通事故、相続案件を多く取り扱っている。
事務所名:SPR法律事務所
事務所URL:http://www.spr-lo.net/