2013年11月12日 17:11 弁護士ドットコム
認知症などの人に代わって、「成年後見人」が財産管理や契約の代行をする成年後見制度。高齢者の増加とともに存在感が増しているこの制度だが、疑問を抱く人もいるようだ。
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10月に放映された毎日放送の報道番組によると、後見人として母親の財産管理をしていた男性のもとに突然、裁判所から「監督人を選任した」という通知が届いたという。監督人は後見人のいわば「お目付け役」だ。
裁判所からは「遺産相続で母親の財産が増えたから」と理由を告げられたというが、1円単位で家計簿を付け、裁判所への報告もしていた男性は「これだけやって信用されないのはどういうことか」と疑問を感じたという。また、月額およそ2万円かかる監督人の報酬を、男性が負担しなければならないことにも、不満を抱いた様子だ。
この「監督人」はどんな役割を担い、どのような場合に必要だと判断されるのだろうか。高齢者の法律問題にも熱心に取り組んでいるという伊藤俊文弁護士に聞いた。
「成年後見人の主な職務は、成年被後見人(後見を受けている人)の心身の状態や生活状況に配慮しながら、財産を適正に管理し、必要な代理行為を行うことです(民法858条、859条参照)。
成年被後見人は、『精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況』にありますので(民法7条参照)、成年後見人が適正に職務を行っているかを自分で判断することは困難です。
もし成年後見人が不適正な職務を行えば、取り返しがつかないことになりかねません。そのため、第三者が成年後見人の職務が適正になされているかを監督する必要があります」
監督人は、成年後見人をチェックする役割を担っているわけだ。監督人が選任されるのはどんな場合なのだろうか。
「家庭裁判所は、成年後見人の職務を監督する必要があると認めるとき、請求または職権で、成年後見監督人を選任し、成年後見人の職務を監督させることができます(民法849条の2参照)」
家庭裁判所が客観的に判断して、必要だとされた場合に選任される、ということだ。それでは具体的に、どんなケースだと、『必要があると認められる』のだろうか。伊藤弁護士に例を挙げてもらった。
「たとえば、次のような場合が考えられるでしょう。
(1)親族間に対立があり、成年後見人が事務を処理するにあたり、紛争が起きる可能性のある場合
(2)遂行する後見事務について、成年後見人の理解が乏しい場合
(3)成年被後見人の所有資産が多く、後見事務の管理に問題が生じるおそれがある場合
(4)成年後見人と成年被後見人との間に多額の金銭のやりとりがあり、その清算について成年被後見人の利益を特に保護する必要がある場合
(5)成年後見人と成年被後見人との生活費等が十分に分離されていない場合
(6)成年後見人と成年被後見人との間に、遺産分割協議などの利益相反する行為がある場合」
たしかに、こういったケースであれば、第三者の監督があったほうが良さそうだ。監督人の報酬額や、それを誰がどのような形で支払うかについては、議論の余地もあるかもしれないが……。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
伊藤 俊文(いとう・としふみ)弁護士
大阪府出身。名古屋大学法学部卒。平成17年10月大阪弁護士会登録(58期)。平成17年10月~平成20年12月大阪市内の法律事務所にて勤務弁護士として従事、平成21年1月フェアリー・ウェル法律事務所にパートナー弁護士として合流。
事務所名:フェアリー・ウェル法律事務所
事務所URL:http://www.fairywell-law.jp/