2013年11月09日 19:51 弁護士ドットコム
勝手に商品を送りつけ、代金を請求する「送りつけ商法」が大問題になっている。10月末には、東京都新宿区の健康食品販売会社の元従業員11人が詐欺容疑で逮捕された。報道によると、被害者は約1万人、被害総額は2億円以上にのぼる可能性があるという。
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この会社は、高齢者の家に「あなたが注文した商品を送る」などと電話をし、商品を勝手に送りつけ、高額の代金を請求する手口を繰り返していた。電話を受けた側が「注文した覚えがない」と断っても「あなたが忘れてしまっただけ」などと言いくるめ、代金引き換えの宅配便などで、強引に商品を送りつけていたという。
このような「送りつけ商法」にひっかからないために、どうしたらいいだろうか。もし、突然知らない相手から代引きの宅配便が届いたり、注文した覚えのない商品が送られてきたら、どう対処したらいいのだろうか。消費者問題にくわしい大和幸四郎弁護士に聞いた。
「業者に言いくるめられないように、まず契約の仕組みを知っておきましょう。商品の売り買いをめぐる契約を『売買契約』といいます。業者が商品を売り、支払いをうけるためには、この契約が成立している必要があります」
大和弁護士はこのように切り出した。では、この「売買契約」はいつ成立するのだろうか。
「商品を一方的に送りつける行為は、業者側が消費者に対して『購入してください』と申し込む意思表示に過ぎません。それだけでは、契約は成立しません。
売買契約が成立するのは、『申込み』に対して『承諾』があり、販売する側と購入する側の意思表示が合致したときです。
消費者から申し込まれたわけでもない商品を一方的に送りつけておいて、『返送しなければ契約が成立する』といった主張をしても、法的には認められません」
つまり、送りつけられた荷物を受け取っただけでは、売買契約は成立しておらず、受け取った側が支払いをする義務もしないということだ。こうした送りつけ商法には、どう対処すればいいのだろうか。
大和弁護士は次のようなアドバイスをする。
「まず、身に覚えのない『代金引換』の荷物は受け取らないことです。お金をいったん支払ってしまうと、取り戻すのは簡単ではありません。
次に、荷物を受け取ってしまった場合ですが、絶対に代金を支払わないでください。さきほど述べたように、送りつけられた側である消費者が承諾しない限り、契約は成立しません。つまり、『返品しない場合は承諾したものとみなす』といった文言が書かれていても、それは無効です」
では、送りつけられた商品はどう取り扱えばよいのだろうか。大和弁護士は「特定商取引法は、こういった問題に対して規制を設けています」と解説する。
「まず、商品購入の意思がないのなら、商品の送付があった日から数えて14日間は、商品を使用・消費しないでください。もし業者が引き取りに来た場合などは、返還しなければなりません。
この期間内に使ったり、処分してしまうと、購入する意思があったとみなされますので気をつけてください。
一方、この期間を過ぎると、業者は送り付けた商品の返還を請求することができなくなります。つまり、14日間が経過すれば、受け取った側は使用・消費しようが捨てようが自由に処分することができます」
大和弁護士はこのように対処法を助言していた。もし、申し込んだ覚えのない商品が家に届いたら、こうしたアドバイスを思い出して、落ち着いて対処してほしい。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・消費者問題対策委員会委員長。現佐賀大学客員教授。借金問題、刑事・男女問題など実績多数。元「西鉄高速バスジャック事件」付添人。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/