トップへ

楽天・三木谷社長が激怒 「薬ネット販売」に対する規制は「違憲」なのか?

2013年11月08日 16:31  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

インターネットを使った市販薬の販売について、薬事法が改正され、一部の薬について規制がかけられる見通しとなった。副作用のリスクの評価が定まっていない23種類の薬については、当初は対面販売に限り、発売から原則3年以内でネット販売を認めるという内容だ。


【関連記事:テレビでおなじみ「負けたら食事代おごり」のゲーム 「賭博罪」にはならないの?】



一方、ネット通販大手「楽天」の三木谷浩史社長は、政府の方針に対して、「医薬品のネット販売を規制する、科学的かつ客観的な事実は一切ない。時代錯誤も甚だしい」と激しく反発している。もし法改正が実現したら、国を相手取って「全面解禁」を求める訴訟を起こす構えだ。



市販薬のネット販売はかつて、厚労省が定めた規則で禁止されていたが、最高裁が今年1月、「国の規制は憲法に違反して無効だ」という判決を下したことで、事実上の解禁状態になっていた。今回の法案が成立すれば、一部の薬のネット販売について再び規制の網がかかることになる。



はたして薬のネット販売に国が規制をかけることは、憲法違反なのだろうか。行政訴訟の経験が豊富な湯川二朗弁護士に聞いた。



●薬のネット販売が「違法」だったことはこれまで一度もない


「最初に、今年1月の最高裁判決の内容を確認しておきましょう。



最高裁は、《薬事法には、ネット販売を一律禁止する趣旨の文言は見られない》という理由で、厚労省が規則でネット販売を禁止することを、『違法』だと判断しました。



つまり法律上では、薬のネット販売はこれまで一度も禁止されていなかったにもかかわらず、根拠なく厚労省がネット販売を禁止していただけ、という話だったのです」



湯川弁護士はこのように解説する。そうすると、いま話題になっている改正は、「新規でネット販売規制を導入する」という話になる。それは許されるのだろうか?



「薬のネット販売規制は憲法で保障された職業活動の自由を制約するものです。国民の利便をも損ないます。



しかし、他方で、国としては薬の安全性を確保しなければなりません。二度と薬害の轍を踏みたくないというのは国民の思いでもあります。



そうなると問題は、その調整をどこで図るか、になります」



●法律が成立するまでに議論を尽くすべき


「大臣の記者会見を見る限り、今回の法改正は次のような内容です。(1)既存一般用医薬品はネット販売を認めるが、劇薬は認めない。(2)医療用医薬品から一般用医薬品にスイッチして間もない医薬品は、3年間を上限として、安全性の検証ができるまでの間はネット販売は認めず、対面販売に限る。



販売が認められない劇薬は5品目で、副作用のリスク評価が定まっていない23品目については、医学薬学専門家会議の検討を踏まえて、上限3年間に限り、法律を改正してネット販売を禁止するということですから、憲法に違反するとまでは言えないのではないかとも思われます」



そのあたりは、国会の立法裁量の範囲ということだろうか。ただ、法案内容が完全に固まったわけはなさそうだし、国会での審議もこれからだ。湯川弁護士は次のように述べ、慎重な検討を呼びかけていた。



「対面販売しか許されない医薬品の危険性というものがあるのか。もし仮にそのような医薬品があるとして、その線引きはどこにするのか。検証期間のあり方は合理的なのか。それらが医学的薬学的に合理的な知見によって、裏付けられているのか……。いずれにしても、法律成立までの間にこういった議論を尽くしていくべきでしょう」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
湯川 二朗(ゆかわ・じろう)弁護士
京都出身ですが、東京の大学を出て、東京で弁護士を開業しました。その後、福井に移り、さらに京都に戻って地元で弁護士をやっています。なるべくフットワーク軽く、現地に足を運ぶようにしています。
事務所名:湯川法律事務所