2013年11月07日 12:31 弁護士ドットコム
利用時間に応じて料金を支払う自動車の「コインパーキング」。その料金をめぐり、全国の消費生活センターに寄せられる苦情や相談が年々増加しているという。
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たとえば、「一日最大500円」と表示された看板を見て、コインパーキングを5日間利用したところ、8700円を請求されたというケースがあった。業者は「入庫後1回のみ1日500円で、その後は1時間につき100円かかる」と説明。細かな規約は自動販売機裏の分かりにくい場所に表示されていたという。
また、コインパーキングの看板に「最大料金900円」「24時」と書かれていたのを見て、午後9時ごろから翌日の午後6時半まで駐車したところ、3400円を請求されたという相談もあった。業者からは「最大料金は入庫当日24時までで、24時を過ぎた場合には適用されない」と説明があったそうだ。
看板などをじっくり読めば説明はあったようだが、利用者は「夜間に車に乗りながらの状態ではよく確認できなかった」などと不満を抱き、センターに相談したようだ。こうした場合でも、利用者はコインパーキング業者の請求する金額を支払わないといけないのだろうか。消費者契約にくわしい射場守夫弁護士に聞いた。
「いずれも利用者にとって不利益な条件の表示が、見づらかった事例です。実際に料金を支払わなければならないかは、諸般の事情によって決まりますが、一番重要なのは、これらの表示が『契約内容に含まれるといえる程度に表示されていたか』でしょう」
具体的には、どんな風に考えればいいのだろうか。
「前者の事例は、規約が自動販売機という遮蔽物の後ろ側に表示されていたとのことですので、およそ一般の利用者は、認識できないのではないでしょうか。そうすると、不利益条件は契約内容とはならず、利用者が認識できた契約内容(料金)についてだけ、支払義務が発生すると考えられます。
また後者の事例も、看板を見た一般の利用者が『24時間で900円まで』と認識し、『当日の24時を経過した後は通常料金になる』と認識できないような場合は、同様の結論となると考えられます」
つまり、そうしたルールがあまりに分かりにくい形で提示されていた場合、それに基づいて契約が結ばれたとは言えないということだろう。
また、利用者に不利な表示が見えにくかったことを、消費者契約法4条2項の『不利益事実の不告知』と捉え、契約を取り消すという考え方もあるようだ。射場弁護士はこのように指摘したうえで、次のようにつけ加えた。
「ただし、いずれの事例も、実際の場面を確認してみないと、不利益条件の表示として十分であったかどうか、確かなことは言えません。
また、利用者がこの駐車場を使ったことがあったり、同様の料金システムを採用するコイン駐車場に駐めたことがある人であれば、結論は微妙になってくるでしょう」
「なお、もし駐車場の料金表示が、実際に請求される料金よりも著しく有利であると一般の消費者に誤認される表示である場合、景品表示法上の『不当表示』(4条1項2号)にあたります。
不当表示は、内閣総理大臣の措置命令や都道府県知事による行政指導の対象となることもあり、措置命令に従わない場合には罰則もあります」
射場弁護士はこのように述べたうえで、利用者に対しても注意を促していた。
「コインパーキングは料金を支払わないと外に出られない構造となっているため、多くの利用者は納得できなくとも、支払をせざるを得ないのではないでしょうか。うまい話には裏があることを忘れないでいただければと思います」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
射場 守夫(いば・もりお)弁護士
奈良弁護士会所属。消費者保護委員会、高齢者・障害者支援センター運営委員会、法教育に関する特別委員会所属。消費者契約や債務整理、高齢者(成年後見)に関する諸問題、交通事故を多く取り扱ってきた。
事務所名:一法律事務所
事務所URL:http://www.hajime-law.jp/