2013年11月06日 11:50 弁護士ドットコム
「おい! オークション出品して転売してんじゃねーよ。ふざけんなよ」
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人気アイドルグループ「SKE48」のメンバー、松村香織さんがSNSサイト「Google+」でこんな風に怒りを爆発させた。激怒の理由は、1000枚限定のソロデビューシングルCD「マツムラブ!」が、10月20日の発売直後、ネットオークションの「ヤフオク!」に複数出品されていたからだ。
発売イベントに集まったファンに一枚一枚、自ら手渡して販売したCDだったため、すぐに「転売」されたことが悔しかったようだ。怒りはなかなか冷めなかったようで、松村さんは「落札してキャンセルしようよ」「落札して受け取り拒否して下さい」という呼びかけまでも投稿していた。
だが、オークションで、落札したのにキャンセルするというのは本来、認められる行為ではないだろう。このような呼びかけをすることは、法的に問題ないのだろうか。インターネット関係の法律問題にくわしい岩永利彦弁護士に聞いた。
「ヤフオク!では落札してキャンセルすることを『イタズラ入札』と呼び、かなり問題視しているようです。あそこはイタズラ入札ばかりだなどと評判が立てば、信用がガタ落ちして参加者がいなくなるでしょうから、その信用に傷をつけるような行為に目を光らせているのだと思います。
加えて、イタズラ入札は、出品した人にも迷惑です。出品者としてみれば、正規の落札者から得られたはずの代価を得られないなど、取引を妨害されたことになります。ピザ屋への虚偽の注文のようなものでしょう」
岩永弁護士はこのように指摘する。イタズラ入札は、「犯罪」となってしまう可能性もあるのだろうか?
「イタズラ入札は、ヤフオク!の信用を傷つけるとともに、出品者の取引を妨害する行為と言え、当然、認められる行為ではありません。
前者は刑法233条前段の『信用毀損罪』にあたる可能性があり、後者は刑法233条後段の『偽計業務妨害罪』にあたる可能性があります。もちろん、刑事上だけでなく、民事上の『不法行為責任』を問われる可能性もあります」
そうなると、「落札してキャンセルしようよ」と呼びかけることも、問題と言えるのだろうか?
「刑事上も民事上も違法となるような行為への呼び掛けが、法的に問題ないわけがありません。まず、刑事上では、イタズラ入札の行為をそそのかした、またはその犯意を強めたということで、さきほどあげた罪の教唆犯や幇助犯にあたる可能性があります。
また、民事上でも、教唆・幇助は、共同不法行為責任(民法719条2項)として、損害賠償を請求されかねないものです。このような呼びかけは早めに撤回などをしたほうが良いと思います」
岩永弁護士はこのように指摘し、注意を促していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
岩永 利彦(いわなが・としひこ)弁護士
ネット等のIT系やモノ作り系の技術法務、知的財産権の問題に詳しい。
メーカーでのエンジニア、法務・知財部での弁理士を経て、弁護士登録した理系弁護士。
事務所名:岩永総合法律事務所
事務所URL:http://www.iwanagalaw.jp/