2013年11月04日 13:10 弁護士ドットコム
秋も深まり、マツタケやヒラタケ、マイタケなど、キノコ狩りが楽しい季節だ。一方この時期は、誤って毒キノコを食べてしまう「誤食」被害が集中するシーズンでもある。
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専門家や自治体は「素人判断は危険。食用とはっきり判断がつかないものは食べないように」と注意を呼びかけている。今年はすでに山形県で4件の誤食被害が報告されており、熊本県では死者も出ている。
だが、友人や親戚にキノコを分けてもらった場合や知人の家の食事に招かれた場合は、断るのが難しいかもしれない。もし、そうしたケースで食べたのがたまたま毒キノコで、それが原因で食中毒になってしまったら、誰かに責任を問えるのだろうか。採った人? 料理した人? それとも自己責任? 川原俊明弁護士に聞いた。
「四季の中でも秋は多くの果実を生む季節です。くだものやキノコが収穫の時期を迎え、食卓に恵みを与えてくれています。希少価値のあるマツタケなどを求めて、山に入る趣味の方も結構おられるようです。
ただ、キノコはカビとともに菌類として分類されているように、その性質は多種多様です。素人には食用か有毒かどうかの判断は困難な場合が多く、毎年秋になると毒キノコを食べてしまう被害が続出し、死者が出る場合もあるようです」
それでは、自分が採ったキノコを振る舞って、他人を食中毒に巻き込んでしまった場合、誰が責任を取るのだろうか?
「まず、《キノコの有毒性判断は素人にはムリであること》を前提に考えるべきです。
もし、他人に食中毒などの被害を与えてしまえば、それは採取者側の有毒性判断に『慢心があった』ということになるでしょう。
それが『注意義務違反』とされ、キノコを採取・提供した人の過失が認定された場合、被害者に対する損害賠償義務が発生してしまいます」
川原弁護士はこのように、勝手に安全だと思い込んだことが「注意義務違反」と見なされるリスクもあると、注意を促す。それでは採取者から毒キノコを受け取り、知らずに調理をした人も、責任を負う可能性はあるのだろうか?
「もし、松茸や椎茸などと異なり、見慣れぬキノコであることを認識しながら調理し、それが毒性を有していた結果、被害を発生させたのなら、これも過失責任があると言わざるを得ません。
毒キノコを提供した人と調理した人との間に過失の連帯責任が問われ、共同不法行為として賠償義務を負うこともあるでしょう」
よくよく考えれば、いくら知人に渡されたといっても、知らない材料を調理・提供することは、リスクも伴うだろう。それでは、食べた人の自己責任についてはどうだろう?
「その毒キノコを食べた怖い物知らずの人にも責任の一端がある、とされる場合もあるでしょう。そうなれば『過失相殺』が起き、損害賠償が大幅に減額される可能性もあります」
結局、採取した人、調理した人、食べた人、どの立場にいても一定の「責任」が生じる場合はあるということだ。川原弁護士は「見慣れないキノコの提供は、善意のおもてなしでは済みません。危険なものには近寄らないほうが得策でしょう」と話していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
川原 俊明(かわはら・としあき)弁護士
自称「熱血度NO.1」の弁護士。民事事件から刑事事件まで幅広く取り扱う。
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事務所名:弁護士法人川原総合法律事務所
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