2013年11月03日 14:30 弁護士ドットコム
普段はおとなしく、主人の言うことをよく聞く利口な愛犬。でも、ふとした拍子に飼い犬が逃げてしまったら……? そしてあろうことか他人を襲い、噛みついてしまったら……? 犬を飼っている人なら誰しも、そんな不安を抱いた経験があるだろう。
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実際、飼い犬が人を襲い、ケガを負わせてしまうケースは珍しくない。しばしばニュースにもなり、大阪で脱走した大型犬が複数の人を負傷させてしまった際には、テレビでも大きく取り上げられていた。
それでは万が一、飼い犬が暴れて他人にケガをさせてしまった場合、飼い主にはどんな責任が発生するのだろうか。場合によってはそれが「犯罪」とされるケースもあるのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。
「飼い犬が暴れて他人をケガさせた場合、他人に損害を与えているわけですので、飼い主に落ち度があるならば民事上の損害賠償責任は当然発生します」
坂野弁護士はこう切り出した。
「民法718条1項により、動物の占有者(今回のケースでは飼い主)は、飼い犬が他人に与えた損害を賠償しなければなりません。
同項ただし書きには、『動物の種類および性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときはこの限りではない』という記載があります。しかし、『相当の注意』を払って管理をしていたと、裁判所に認めてもらうことは、実際には相当困難です」
つまり、飼い犬による事故が発生したら、飼い主がしっかり管理していたつもりでも、責任を免れることはなかなか難しいというわけだ。
「誰かにケガをさせた場合、刑事責任も発生する余地があります。飼い主の過失の程度により、過失傷害罪(刑法209条)や重過失傷害罪(刑法211条1項後段)が考えられます。その他、地域によっては条例違反による処罰もあります。
また、訓練や散歩を頼まれた業者の落ち度なら、業務上過失傷害罪(刑法211条前段)になる可能性もあるでしょう。
さらに、これは考えにくいケースですが、もし飼い主がわざと犬をけしかけて、他人にケガをさせた場合は、犬を道具として使った傷害罪(刑法204条)が適用される可能性もあります」
坂野弁護士はこのように指摘し、注意をよびかけていた。犬の成長は早く、長生きするケースも少なくない。犬の寿命が来るまで、適切に管理できるのか。ペットとして犬を飼う際には、こうした点をきちんと念頭に置いたほうがよさそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
イデア綜合法律事務所 パートナー弁護士。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則(中央経済社)」。近時は火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:イデア綜合法律事務所
事務所URL:http://shonen.idealaw.jp/